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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第二章 アルの物語
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9話 少年の今

第二章スタートです。

 あの王都の焼き討ち事件から4年がたった。実行犯は事件から半年後に()()()全て捕らえられている。そう、「火狂い」はその存在を黙殺されている。かつては小国を一つ滅ぼしたとさえ言われるアラストールが王都の焼き討ちをしたとあっては国民がパニックになるからだとソフィアばあちゃんと推察している。そう、俺もとうとう言葉が分かるようになったのだ。エレシアに感謝である。まぁ、日常会話を覚えるのに一ヶ月かかってしまったが。後は、ばあちゃんにでも聞いて覚えていけるとエレシアに言うと早いと言われ、怒られた。んで帰って行った。解せぬ。一ヶ月引き留めたの怒ってるんだろうか。


 そんな俺が今何をしているかというとなんと魔術の特訓である。ばあちゃんの得意な魔術の一つなんだそうだ。綺麗な扇を見せて貰った。一つ一つの羽に異なる魔方陣を作り、多くの魔術を使えるのだ。扇の骨にその得意な魔術の魔方陣は仕込んであり、作るのは羽の部分だ。

 俺は魔法使いだから、魔方陣を使わずに魔力で直接マナに干渉できるらしい。魔術師は魔方陣に魔力を流すことで空気の抵抗力で風がおきるみたいに集まったマナを魔方陣に添わせる。この量が一定値を越えると発光と共にマナが力場を形成し、魔術として形になるとかなんとか。俺にはさっぱりだ。ちなみに魔法使いのは魔法陣といい、マナがその現象を起こすために集まり流れて発光した跡だという。

 電気流したから水が電気分解したのが魔法陣で、電気を流すために水に融合すんのが魔方陣ってことか。とエレシアに聞いたところ「えっ?うーん、間違って無いのかな?うん、多分そんな感じ」と言われた。「例え話が独特だね。」とも言われた。かろうじて理解できる理数系がそこなんです。許してください。むしろ数学とか分かるやつオカシイ。

 そんな俺が本来あるはずの悪魔の補助なしで、感覚のみで魔力を手繰り複雑怪奇な魔方陣を作れと言われると無理だ。ソフィアばあちゃんにも才能なしと言われた。何ヵ月かに一度のペースでここを訪れて何泊かするエレシアにも向いてないと言い切られた。魔力も少ない言われてるしな。


 そんな俺に内緒でばあちゃんが教えてくれているのが、「アーツ」という魔術である。魔力を形にして固めるこの魔術は「飛来する結晶」と呼ばれた大魔術師の遺産らしい。なんか凄そうだと思ってたら、魔力とは魂で~ってのを提唱した人の一番弟子らしい。どんだけ凄かったん?その人。ばあちゃんたち魔術師からは「賢者」と呼ばれているそうだ。納得である。

 それはともかく「アーツ」の話だ。これなら魔力さえ操る術に長けていれば、魔方陣は単純であるらしい。その魔力量分の物なら作れる魔術だ。魔方陣をいじれば簡単な効果を持たせることもできる。小爆発とか熱くなるとか。つまり汎用性が高い。ただ、道具なら作れば良いし、効果を複雑化するとせっかく簡単な魔方陣も複雑化するため使う人は少ないらしい。使用者が持っていないと砕けて魔力にもどり、霧散してしまうのも使用者の少ない理由だ。

 だが、俺には最適だ。何せ魔法使いなのだから、魔力は感覚で操れる。それに魔術が生まれてしまったこの世界ではわざわざ魔力を使わない物理学を研究する物好きはいなかったようなのだ。何せ魔術は努力で誰でも使える。他の物を研究するならそっちを研究した方が効率がいい。何時の世も研究とは、その先に便利がないと、協力者もでないのだろうから。

 つまり、火薬も雑だしジャイロや空説力学がお粗末なのだ。だから、俺には「アーツ」が必要である。アーツは弾性の調節という効果もある。上げれば硬度も下がりバネやゴムの様に出来るのだ。幸い俺にはアレの知識が豊富に詰まっている。アレ以上に「火狂い」に効果的な物は無いだろうしな。


「また、失敗かぁ。やっぱりギミック付きの物は作りにくいな。」

「動作付きの形に拘って最小限の爆発の効果しか着けずに最大の効果を出すってのは面白いんだけどねぇ。」

「あと、単純にこの形に愛着あるんだよね。だから、上手くいってほしいんだけどなぁ。」

「私にできるのはその効果を持った魔方陣の形を教えてあげるまで。そこからはアル君の頑張り次第だよ。それに魔方陣は出来ているじゃないの。魔力を効果通りに結晶化させる速度も随分早いわぁ。」

「でも、今んとこ成功したの殴ったらボンっていう棒ぐらいだよ?全然違うし。はぁ。」

「何ができるのか楽しみだよ。さぁ、お茶が入ったよ。」

「あ、ありがと。ばあちゃん。」


 すいません。作ってんの人殺しの道具です。






「あら、お庭にいらしたんですのね。何を?」

「男の子の秘密の特訓よ。ふふ。」

「ばあちゃん、俺もう16。男の子って年でもないよ。」


 どうやらエレシアが来ていたようだ。ちなみに今は大丈夫だが、最初に貴族モードの話し方聞いたときは吹き出した。エレシアにはこの「アーツ」は秘密だ。どうやらエレシアの前世にも、アレはあるようだし正体は隠しておきたい。あんまり復讐するってのは気づかれたくないからな。二人には森で育ったといってあるし、前世は火事で死んだといってある。嘘はついてないが「火狂い」の事は話していない。得た情報は全て王都焼き討ちの時だといった。


「ふーん、そうやって恩師である私を仲間外れにするのですね。アルは。」

「エレシア嬢も私に秘密になさっている事の一つや二つは在るでしょう?」

「まぁ、それはそうですが...。」


 正直だよな。こいつ。

 俺が微笑ましいものを見る目をしていたのがばれたのか、エレシアに子供扱いするなと怒られてしまった。エレシアには怒られてばかりの俺だった。

次回「少女の今」

お楽しみに!

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