プロローグ
登録できた喜びで投稿です。
宣伝や練習も兼ねてますので次回までかなり空きます。
クリスマスを翌日に控えた夜。
一人の少年が住宅街を駆けていた。腕に抱える奇麗に包装された袋の中には、先週のサバゲーの戦利品とバイトをして貯めたお金で購入したペンダントが小さく瞬いている。きれいに輝く宝石は小振りだがそのデザインから学生には奮発した品だとわかる。
「明日俺とスキーに行かないか?っつって、これを渡して...いや、渡しに来てから誘ってって方が自然かな?あーこれ、貯金もう少し下ろさないと明日足りねえな。しゃーない、根掘り葉掘り聞かれんのは諦めて、来月返すっつって伯父さんに借りるか...。」
聞かれたくはないであろう計画をこぼしつつ駆ける少年の顔が突如朱く照らされ少年の動きが止まる。こんなところで聞こえてはいけない音と、それにかき消されながらも妙に記憶にこびりつく声がかすかに聞こえた。少年が顔を上げたのはその音は少年にとってすべてを失う合図だから。幼いころに両親も、友達も、居場所も失ったきっかけの音。ゴウッという、発火音。
顔を上げた少年の視界に飛び込んできたのは、未だ日常の明かりの灯るあの娘の部屋。いまだ無事なことに安堵しつつ、息を吸い込み声を出そうとしたとき、大きな火傷の残る右頬に鋭い痛みが走る。
「あぁ、ダメじゃあ、ないか。叫ぶなんて、マネしたら。今しがた、旅立ちを始めた、あの女性の声が、聞こえてこないし、なによりも...炎に失礼だろう!?あの美しさに静寂で答え歌声に耳を傾けるくらい何故できない!?君には心がないのか!?」
「...あ?えぇ?何言ってんだよ?あんたは...っ」
ロープの切れ端のようなものでナイフをぬぐいつつ現れ、急に逆上を始める男に困惑し頭が回らない少年は男の奥を見て固まる。そこにあった、いやいたのは首にロープをきつく巻かれながら今まさに焼かれている女性だったからだ。
「うん?あぁ、彼女かい?静かになるように、息のできるぎりぎりで、首をロープで、縛っておいたんだ。本当は、私が自分で、絞めることができれば、完璧なんだけど。そういえば、まだこの家の娘に、会ってないな。家ごと、焼かれちゃったか。勿体無いなぁ。」
「っ火事だ!逃げろ涼風!」
咄嗟に叫ぶ少年に周囲がざわめき、少年にきつい臭いの液体がかかる。
「ガソリン!?」
「だから叫ぶなと言ってるんだ俺は!」
ガソリンは唯の脅しだったようでナイフを構えた男が襲い掛かる。少年が前に出した左腕に深くナイフが刺さる。しかし、そのまま少年は右の手で刺さったナイフを男の手の上から逆手で掴む。そのままナイフを抜き左腕を相手の胸に、右手を左腕の上を越えて相手の腹にたたきつけそのまま後ろに回り、左腕と足を使い投げた。少年がサバゲーで詰められたときに使う巴投げのような何かである。これをまともに食らうと数分は気絶している。
「っつ!本物では初めてだな、マジでいってぇ!」
「静葵君どうしよう!もう火がそこまで!!って静葵君も大丈夫!?血がいっぱい...」
「人の心配してる場合じゃないって。すぐ行くから、燃えそうなものは入り口から遠ざけておいて!」
「分かった。後で用事聞かせてね。待ってるから。」
そういうと少女は窓から引っ込んだ。
「バレバレじゃん...まぁ、こんな時間に来てるからな...。でも、こんなことになって言う用件でも無いと思うんだけど...。」
少年は火の中を通るための水を探す。その時だった。背後から強く押された少年は今燃え盛っている家へと突っ込んだ。身体中のガソリンに火がつく。体が燃えていく。息ができない。しかし、今の少年はそれよりも失う事が怖かった。ただ一人化け物と呼ばないでくれたあの娘が燃えてしまうのが恐ろしかった。故に少年は炎の迷路と化した家を進んだ。
少年は思った。
いくら己が焼かれようとも、もう炎に何も奪わせないと。そんなもの俺が滅ぼしてやると。
少女は信じた。
来ると言った火傷の少年は訪れると。2人で笑い会える日が来ると。
男は考えた。
この美しい炎が永遠に続けば良いと。その中で自らも果てることなく賛美したいと。
翌日、3人の焼死体と1人の刺殺体が警察に運び込まれ、死亡が確認された。
さて、これからどう進めるか、細かいとこ考えないと...。