承知の上
ただの自己満
仕事が終わって休憩室に入る。
先客がいた。
熊本さんだ。
熊本さんは扉側に座っておりこちらに背を向けこちらに気づいていない。声は弾んでいていつになく楽しそうな声が聞こえる。
それでいて…どこか甘いような。
「いいじゃない、一緒にいこうよ」
うん、やっぱり声が甘く拗ねているようにも聞こえる。
なんとなく僕は聞いちゃいけないような気がしつつも普段見せない声色が気になって区切りの向こう側に腰かけた。
「だめ……?……あやか?」
ふと声色が変わった。甘えるように懇願した後にぽつり、と小さな声で別の人の名前を出た。あやか…中本彩花さんか。
賑やかで熊本さんの仲良い友人だ。
「なんでもないわよ、とりあえず休憩終わるからまた連絡するよ」
そう聞こえて僕は慌ててた。急いで死角に移動した後に熊本さんの休憩はまだ残っているはず…と気づいて少し仕切りの向こうを覗いた。丁度みえない相手にひらひらと手を振って別れの挨拶を終えてそそくさと通話を切ったようだ。声色とは別に眉が下がっており悲しそうな悔しそうな顔だった。
「……ほんと、自分勝手」
風に乗って聞こえた声は小さかったけど僕の耳に届いた。泣き声だった。
特に意味なし