暴かれた真実
俺の個人的な見解ではあるが女という種族は空想上または男の前でこそ、華があり愛でるに値する生き物である。
単独行動よりも集団行動を好むがその実内部抗争が激しく、いざ第三者の手により一箇所に集められるとまるで一壺の中に入れられた害虫の如く殺し合いが行われる。一説には夜な夜な現れる暴走族よりもたちが悪いと評される。
しかしそんな偏見など悉く慈愛の抱擁で揉み消すが如く、この女学園にそのような片鱗は一切見受けられない。ここは神が現世に与えたイヴのみのエデンなのかもしれない。
教室での出来事に関して特筆するものはなく、現在舞台は講堂である。
「新入生の皆様。ご入学おめでとうございます。在校生一同、皆様方を心からお祝いしております」
校長の挨拶で入学式の幕は切られ、生徒会長にマイクが渡された。彼女の名前は城ケ崎 麗奈というらしく、名前負けしない美貌を持っていた。
腰部まで一直線に伸びた長い黒髪は、一本一本を天使が作り上げたかのように繊細で、最早芸術の域だ。モナリザと並べてもいい勝負だろう。
褒めるべきは容貌だけではない。その艶やかな口から発せられた声は、街中で聴いたのなら誰もがその方を向くだろう。
だが一つ欠点をあげるならば、胸がないことだ。というかそれは、全生徒に言える。
彼女の全てに見惚れていると、横にいる胡桃が俺の腕をツンツンとつつき、「生徒会長、ものすごく可愛いね……」と言った。俺は頷いた。すると胡桃はエヘヘと笑う。
(何えへへって……!? 生徒会長も可愛いけどお前も十分に可愛いんだよぉ!!)
(何えへへって……!? これ絶対黒歴史だ。死にたい。すっげぇ死にたい…………)
(何今年の生徒……!? どこもかしこも可愛い子しかいない!! やっばい俺生徒会長になって正解だわ。中学時代の経験が生きた!!)
百合ノ花学園生徒会長城ケ崎 麗奈もとい隆二は心を躍らせていた。
入学式は胡桃の可愛さの再確認、そして生徒会長の美貌を述べるだけで、他に述べることは無い。もしもっと具体的な説明を読者諸君が欲すならば、百聞は一見に如かずだ。すぐさま女装してここへ来給え。
◇◆◇
「何故こうなった…………」
本校長佐々木 信子は一人校長室で頭と問題を抱えていた。
日本でも数少ない女性校長で、そのカリスマ性は他の校長より一つ抜けていた。が、いま彼女は自身のカリスマ性に猜疑心を抱いている。
今日日本が抱えている問題の一つ、女性の社会進出問題に着手し、本校の教師を全員女性にするという何とも強引な策を取った。
彼女はそれで成功を収め、今では各校に女性の社会進出を呼び掛けている。
そんな彼女が何故苦悩しているのかというと、本校の生徒についてだ。
読者諸君はご存知の通り、この物語の登場人物は今のところ校長を除いて全員女装男子である。
「この学校は……、一体いつから男子校へと変わったのだ…………」
ここ三年。生徒たちの微妙な変化に気付いた彼女は生徒たちの来歴などを総ざらいした。その結果辿り着いた事実とは――――。
本校生徒。全員女装男子である。
女性である信子はずっと思っていたのだ。何故ここまで生徒たちの仕草や口調諸々がフィクション紛いなのかを。まるで漫画に出てくるヒロインをそのまま取り出したかのような、そんな感じだ。
「馬鹿げた事実だ……。どうせ奴らの魂胆は女装でもして女子高に入ったら、ふしだらな行為が可能とでも考えていたんだろう……」
しかしこれ以上ない究極の皮肉に、セクハラをしようにも全員男である。
「これが少数ならまだしも全員とはな……。どうする? 全員退学にさせるとしても、それは社会的にも問題だ。私も教師もただでは済まない……」
「校長先生。お茶が入りました」
「ん? ご苦労…………」
今日お茶汲み係の数学科の教師が机にカップを置いた。
「それにしても、今年の生徒も一段と可愛いですね~。私だったら色々ちょっかい掛けちゃいそうです」
「君は相変わらずそうだな……。何度も訊くが生徒の前ではちゃんと弁えて…………それだ!!」
いきなり叫ぶ校長に数学教師は竦んだ。
「ど、どうしたんですか……?」
「君の意見を採用する。有難う……」
「え、えと……、どういたしまして……?」
数学教師は変な目で校長を見た後、そそくさと校長室を後にした。
「そうだ。全員男なら別に退学にさせなくてもいいじゃないか。男だし!」
よって百合ノ花学園の生徒全員退学は廃案とされ、今日より女装男子校と内面上だけでもすることが可決された。




