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百合ノ花女学園  作者: 藍染 シオン
3/5

垣間見る真実

 桐谷(きりたに) 雪乃(ゆきの)もとい桐谷 剛士(たけし)は文字通り期待と不安を胸に詰めていた。

 期待とは築き上げたも同然のハーレムに。不安は女装がばれていないかである。

 もしバレてしまえば、社会的に大問題である。ただでは済まない。故に剛士は、全力で虚構の雪乃を貫き通さねばならなかった。

 歩き方、言葉遣い、仕草に態度とエトセトラ。自身の理想ともいえる女子を全力で装わなければならない。

 ただの女子高ならばここまでのことはしないだろう。彼をここまでさせたのはお嬢様校という環境である。

 どこもかしこも見渡せば大和撫子(やまとなでしこ)の集まりだ。

 (まさに立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花だな……)

 こんな言葉があるように彼も、それらの花であるように振舞わねばならなかった。妥協は許されない。

 「あの…………」

 聞き覚えのあるか細い声で急に背後から話しかけられた。

 「はい……? 私ですか?」

 振り返ったその先には、校門前にいた泣き虫少女が立っていた。少女は両手を胸の前でそわそわさせていた。

 「えと……、あなたも…………C組……ですよね?」

 「え、ええ……。もしかして、あなたもですか?」

 もしそうならば、少し心強かった。どんな場所に居てもどんな格好でも、仲間を作ることは大切だからだ。

 剛士がそう答えると、少女は飛び掛かるように抱きつき再び泣き始めた。

 「私、篠原(しのはら) 胡桃(くるみ)っていいます……。良かった……お友達になれる人が見つけられて……」

 いきなり抱きつかれ、どうしていいのかわからない剛士。ただただ童貞としてのキャパシティをこえてしまいそうであった。

 身体が完全に硬直し、鼓動が速くなる。

 「ちょっ……く、胡桃ちゃん……どうしたの?」

 「はわわわわ……。ご、ごめんなさい…………」

 「い、いや……べ、別に全然大丈夫だけど……」

 (ごめんなさいだ? とんでもない。もっと抱き着いてくれ)

 そんなやり取りをしていると、予冷が鳴った。この子といると遅刻しかねない。

 「胡桃ちゃん。いくよ……」

 「は、はい……!」

 俺と胡桃は自身らの教室へと向かった。

 (お、俺。女の子に抱き着いちゃった……! はわわわわ……とか言ってるし、何俺キモッ……!? やっべぇ女装して勝ちだわ……)

 篠原 胡桃もとい雄二(ゆうじ)は教室に入るまで背徳感と達成感の両方に浸っていた。

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