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紅の島  作者: けんぞう
6/6

忍び寄る影

須川と結衣さんと多由弥さんとともに

地下3階の非常口へと急ぐが

すでに、ホテルのゲートには

白いイタチ共が来ており今にも

ロビーの中に入ってくる勢いだった。


ロビーに集まっている人々は

先ほどの多由弥さんのアナウンスを聞いて

地下3階へと向かおうとしているが

非常階段の扉が開かないらしく

パニック状態と相まってなかなか

先に進めないようだった。


「皆さん落ち着いてください!

階段はまだあります!落ち着いて行動してください!」

多由弥さんが叫んだ。

しかし誰も耳に入っていないようで

依然として事態は変わらなかった。


そうこうしてるうちに

白いイタチ共が今にもホテルの

扉をこじ開けようとしていた。

2階から見えるだけでも

30匹はいる。

空腹なのか口から唾液を垂らしており

目は完全に非常階段に向かう人々を

捉えていた。


このままではまた人が喰われる。


そう判断した俺は

壁に非常用と書いてある箱の中から

斧を取り出して、2階から身を乗り出した。


「俺が下の反対側の

非常用階段の扉を開けてくる。

須川!結衣さんと多由弥さんと一緒に

あそこの倉庫に隠れてろ!」

そう言って俺は

2階トイレの横にある倉庫を 指差した。


「おい善希!無茶なことをするな!

もうすぐイタチ共が入ってくる

そうなったらお前も一緒に喰われるぞ!?」


「俺のことは気にしなくていい!

とにかく下の人達を逃がさないと!」


「飛び降りる気か⁉︎バカなことはよせ!」

「お願い!善希くん!やめて!」

「蓮実さん!無茶です!」


3人が口々に言ってたが

もうその時には

すでに空中だった。

1階から2階までの高さは約5m。

うまく着地すれば大丈夫な高さだ。


着地の瞬間に体を柔道の受け身みたいに

回転させたからなんとか成功した。


ホテルの入り口をみるともう扉は

限界みたいであと1分もすれば

イタチ共が入ってくるだろう。


俺は急いで人々がごった返しているのと

反対側の非常用階段の扉に向かって走った。

そして持っていた斧を振り上げて

扉の鍵を壊した。


「こっちの扉が開いたぞ!

皆早くこっちへ!急げ!イタチ共が

もう入ってくるぞ!」


俺の声が聞こえたのか皆一斉に

こっちへ走ってきた。

皆は我先にと階段を降りようとしており

どけ!邪魔だ!俺が先だ!と

怒号が鳴り響く。


徐々に皆が階段を下り始めて

残り5人となったころ

「さあ早く!急げ!」


そう俺が叫んだ瞬間、

バリーーン‼︎とホテル入り口の扉が

破られ、イタチ共が一斉に入ってきて

非常用階段のとこに1匹のイタチが

凄まじいスピードで走ってきた。


鼻の形が変形しているイタチだ。

俺があの時三脚で殴ったイタチだとすぐに

分かった。


大口を開けて俺に飛びかかってきた。

”グァァァァ!!!!!!!”


俺は思いっきり横にジャンプし

イタチの突進を交わして

斧を振り上げて

力任せにイタチの頭に振り下ろした。

「おおおおおおおおらあ!!!」


グシャっと鈍い音がしてイタチは

全く動かなくなった。


その1匹のイタチを殺した隙に

残りの5人は階段を降りたようだった。


それも束の間残りのイタチ共が

一斉にこちらへと走ってきた。

さすがにこの数を相手にするのは

無理だと判断した俺は

とにかく走った。

俺を喰おうと牙をむき出しにして

襲いかかってくる。

それをなんとかかわしつつ

逃げた。


「なんとかして一斉に追い払う手は。」

そう考えていると

ロビー奥の大きな食堂が目に入った。


「そうだ…!」

俺の頭にある考えが浮かんだ。


食堂に入り、その奥にある厨房へ入った。

かなり広い。充分だ。

扉を閉めて鍵をかけた俺は全ての

コンロのガス栓を外してまわったが

全て外し終わる前にイタチ共は俺の

居場所を嗅ぎ分けて、扉を

ドンドンドン!!!とこじ開けようと

していた。

まずい。間に合わねえ!


そしてついに扉が破られ、

一斉にイタチ共が入ってきた。


俺はあらかじめ持っていたライターに

火をつけて投げた。


ライターが地面に着く前に

窓を破って脱出した。

ライターの火が消えると

次の瞬間



ドガァァァァァァァァァン!!!!!!!


厨房に充満したガスが爆発し

イタチ共の鳴き声が聞こえた。


グァァァァ!!!!!!!



かなり広い厨房だったから

爆発の規模もでかかった。

爆発が落ち着いてから

確認するべく厨房に入った。


地面には黒焦げになった

イタチ達の死体が転がっていて

1匹残らず息絶えていた。

数にして24匹。

ホテルに入ってきた白いイタチ共の

ほとんどを倒し、

俺は厨房をでて倉庫に隠れている

須川達を迎えに向かった。


まだイタチ共がいるかもしれないと

用心しながら2階倉庫に向かったが

何もなかった。


倉庫前に着いて扉を開けると

「善希くん!」

「善希!」「蓮実さん!」


3人が俺を呼んだ。

結衣さんは俺のところへ

走ってきて

「よかった!生きてたんだね!

下で爆発音がしたから…。」


「心配かけてすみません。

でももう大丈夫です!

早く非常用階段からここを出ましょう!」


「イタチ共はもういないのか?」


「心配ない。もう全部死んだ。」

心配する須川に俺は言った。


3人と一緒に1階へ向かい

非常用階段を下った。

この階段を下って

3階に着くとそこからは一本道になっており

ホテルから約5km離れた

避難所へと続いているらしい。


約5kmの道のりを歩いて出口にある

梯子を登ると外で、すぐ先に

避難所らしき建物が見えた。

皆が梯子を登ったのを確認し

避難所らしき建物に入った。

中には、段ボール一杯の食料に

懐中電灯や防寒着などがあり

2週間位は持つようだった。


皆は安堵したが

俺には気がかりな事があった。


先に避難した人らはどこだ?


よく考えたら誰もいない。


俺は外に出て

見渡したが、誰1人としていなかった。


「善希?どうした?」


「おかしくないか?先に非常用階段を

使って逃げた人がどこにもいない。」


「確かにそうだな…。一体どこに?」

と会話していると


「蓮実さん!ちょっと来てください!」


多由弥さんに呼ばれておれは

建物に戻った。

「これは本物なんですか?」

彼女が指差してたのは

銃だった。

猟銃に拳銃。おまけにマシンガンや

手榴弾まであった。

実弾も多くあり合計で

1000発はある。


自衛隊にいたからすぐに分かった。

「これは本物ですね。でもなんで

こんな避難所なんかに?」


「私にも分かりません…。」


「とりあえず俺が持っときます。

自衛隊にいたので使い方は慣れてます。

もしもの時のために。

今日は遅いですし

この暗闇の中歩くのは危険です。

今日はここで夜を明かしましょう。」


「そうですね。私も疲れちゃいました。」


俺は外に出て須川を呼びに行った。

「須川。とりあえず今日はここで

寝るとしよう。明日の朝いなくなった

人達を探そう。」


「そうだな。俺も疲れた。」


「俺はまだ元気あるから外で見張っておく。」


「大丈夫なのか?」


「心配するな。元自衛隊だからな。

慣れてる。」


「そうか。なら頼む。無理すんなよ。」


「ああ。おやすみ。」

そう返して、須川は中へ戻って行った。


猟銃を抱いて周りに何もいないか

見張っていると、

結衣さんが呼んだ

「善希くん大丈夫?」


「ああ。大丈夫ですよ。

結衣さん寝れないんですか?」


「うん…。ちょっと怖くて。

隣にいてもいい?」


「構わないですよ。」

俺がそう返すと、隣に結衣さんは

座った。

「今日は守ってくれてありがとう。

あの時善希くんの判断がなければ

わたしや須川さんや多由弥さんもイタチ達に襲われてたかも…。」


「いや、おれはただ倉庫に隠れろと

言っただけですよ。守るなんて…。」


「ううん!善希くんのおかげだよ!

ありがと!」


満面の笑みで俺にお礼を言う

彼女は本当に魅力的にみえた。

彼女が笑うと心が安らぐ。


ひとしきり話すと結衣さんは疲れたのか

俺の肩にもたれて寝てしまった。


俺は彼女に特別な

感情を抱くようになってた。













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