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紅の島  作者: けんぞう
4/6

白い捕食者と紅の森

休憩を取りはじめてから10分後、調査隊は

再び進みだした。先ほどの死体の一件から

発見した女性は過呼吸を引き起こして

おさまらなくなってしまい、ホテルへと

戻ることになった。

結衣さんとあと何人かの人が

彼女を連れて来た道を戻っていった。

結衣さんは少し不安そうな顔で

俺に会釈をしていった。


残りの調査隊はまだ森の奥深くへと

進んでいった。

季節は秋だというのに日差しは強く

夏のような暑さの中

生い茂る木々をかき分けながら進むので

体力を無駄に消耗した。

荷物持ち担当も同様だ。一つ一つの

機材が無駄に重く、持ちにくい。

俺以外の荷物持ちの人は段々と歩くペースが

遅くなってきて、立ち止まる人が出だした。

須川の分も持ってやっているが

元自衛隊の俺にはあまり関係は無かった。

訓練より何十倍もマシだ、

自衛隊だったころは大人二人分の荷物を

抱えて50kmの森を走ったな…。

そう思い出を振り返っていると

先頭の江川さんが止まってこう言った。


「まもなくヒトツノジカのエリアに入ります。

大人しい動物ですが決して油断しないように。

ツノには充分気をつけて下さいね

それでは、ヒトツノジカの調査を開始します。」


油断しないように。


その言葉が引っかかるが草食獣なら

おそらく安全なのだろう。


ヒトツノジカはツノが一本しかないらしく

見た目はまるでユニコーンのようらしい。

性格は温厚で優しいみたいだ。

ツノには注意が必要みたいだけど。


少しだけ進むと開けた場所があり

そこに15匹くらいのヒトツノジカが見えた。

こちらを見つめているが逃げる様子はなく

警戒はしていないらしい。


成る程、無しかにツノが一本しかない。

体毛は茶色の個体もいれば

本物のユニコーンのように白い

体毛の個体もいた。

生まれてはじめて目にする

未知の生物に胸がおどった。


6つの班にわかれて

早速調査を開始した。

調査といっても動物と触れ合って

性別の見分け方とか、歯の数を

数えたりとかそんな感じだった。


俺は写真を撮る係でひたすら撮りまくっていたが

カメラのバッテリーが切れかかってきたため

バッテリー交換をしに班員のいる所から離れた。


すると10m位先の茂みから何かの動きを

感じた。茂みがガサガサと動いており

赤い2つの光が見えた。

俺は嫌な予感がして汗が止まらなくなった。

なぜならあちこち、そこらじゅうから

視線を感じたからだ。


それが明らかにヒトツノジカではないと

確信した俺は江川さんの元へゆっくりと

近づいた。あの赤い光に背を向けないように。


「すみません。江川さん。

単刀直入に言います。すぐにここを

離れましょう。」

俺は言った。


「ん?なぜかね?何かあったのですか?」


「何かの視線を感じます。それも複数。

何か違う生物が俺たちを囲んでるんです。

今すぐここを離れましょう!嫌な予感がします。」


予感が的中するかのように

複数の視線は調査隊とヒトツノジカがいる所に

近づいている。少しずつ。

それでも俺以外の人は気づいていない。


「ははは!君は心配し過ぎだよ。大丈夫!

事前調査でこの森にはそんな恐ろしい

肉食獣のような動物は1匹もいなかったんだ。

この島の隅々をくまなくチェックしたけどね。」


俺が何か言おうとしたら江川のおじさんは続けて

「それにこんなに多くのヒトツノジカを

見れるなんてラッキーだよ。こんな

チャンス滅多にないんだ。大丈夫。何も起こらないよ。」


「ですが、もしも事前調査の時に見落としていたら?その時にはいなくても、今はいるかもしれません。」

俺が食い気味に言うもんだから

江川さんはちょっとキレ気味に


「大丈夫だと言っているだろう。

君のような素人に口出しはあまりされたくないな?」


その時だった。


それまで大人しかったヒトツノジカ達が一斉に

鳴きだしたのだ。


”ギィ!ギィ!ギィ!!”


草食獣の鳴き声とは思えないほどで

何かに怯えていて、あっちにいけ!と

警告するかのような鳴き方だった。


「一体どうしたんだ?」

江川のおじさんは呆気にとられている。


俺は再び江川さんに言った。

「江川さん!早く離れましょう!

危険な気がします。早く!」


「うるさいな君は!ヒトツノジカの鳴き声は

こんなものだったのか。絶好の機会だ

録音し…。」


次の瞬間だった。


言い終える前に、江川さんの背後から

何かが飛び付いた。


その何かは江川さんの後ろ首に噛み付いて

がむしゃらに江川さんを振り回した。


「助けてくれぇえぇぇ‼︎‼︎」



江川さんは叫ぶが周りの皆は呆気にとられていた

俺も含めて。


ぐわんぐわんとその何かは江川さんを

振り回す。


やがて体から

ゴキっと骨が折れるかのような音がすると

江川さんは声をあげなくなった。


その何かは意識のなくなった江川さんを

離すと、二足で立ち上がって俺へ姿をみせた。




真っ白い雪のような体毛のイタチだ。




だが、体は非常に大きく、

黒人のバスケットボールプレイヤー程はある。

口は深く裂けており、目は真っ赤で

血走っていた。

大きく裂けた口から覗くライオンのような牙には

江川さんの肉片が付着していて

江川さんの血が雪のような真っ白い

体毛を赤く染めており、

見る者の恐怖を助長させた。


白いイタチは俺から視線を外すと


”グォォォォォ!!!!!!!”と

咆哮した。


するとそれが合図かのように

一斉に茂みの中から

白いイタチが飛び出してきて

調査隊の人間とヒトツノジカ達を

一斉に襲いだしたのだ。


皆はパニックとなりなす術なく

白いイタチに襲われていった。


俺は叫んだ。

「皆来た道を戻れ!荷物を全て置いて

全力で走れ!」


俺の声が聞こえた何人かは一斉に森の中へと

逃げた。

半分程の人間は白いイタチに襲われて

無残にも喰われていおり


「助けて!助けてくれぇ!」

「グォォォォォ!!!」


俺は恐怖を振り払って

持っていたカメラの三脚を武器に

白いイタチに向かっていった。

「待っとけ!今すぐ助けるからな!」


だが時すでに遅く


まだ意識があるのにその男は頭から

喰われ始めた。


ミシ…ミシ…グシャ!

頭蓋骨が砕ける音がして

臓器が飛び出した。

男は動かなくなった。


血走った目に負けないくらい

俺も血走った目で白いイタチを睨んだ

そして、男の頭を喰うのに夢中に

なっている白いイタチの顔面を

三脚で思い切り殴った。

鼻の骨が折れる音がした。


白いイタチはあまりの痛みに悶え、

”グォォォォォ!!!ガァァァ!!”

と叫び声をあげている。


その隙に

俺も荷物を全て置いて走り出したが

その先には白いイタチが3匹いた。


幸いこっちには気づいていない。

茂みに隠れて

奴らが通り過ぎるのを息を殺して待つことにした。


ゴキ…グシャ…ミシ…ミシ…バキッ…


骨を噛み砕く音が聞こえる。

肉を貪り食う音も。

人間が喰われているのだ。

それもすぐそこで。


時折白いイタチが鳴き声をあげる。

美味い肉だとでも言ってるかのように。


その凄惨な光景を目の当たりにしてから

10分後腹を満たした白いイタチ共は

去っていった。


周りに何もいないことを確認してから

茂みを出るとそこはまさに地獄絵図だった。


辺り一面緑に囲まれていた神秘的な場所は

人間とヒトツノジカ達の血で真っ赤に

染まっていて、地面には何かの肉片が

いたるところに散らばっていた。

人間の目玉まであった。


太陽に照らされて

辺り一面の血が紅色になる

これが生物の血でなければ

美しい光景だと言えるのだろうが。


俺が歩く度に

グチャ…グチャ…と音を立てる。

耐えきれなくなって吐いた。


このただの肉片がほんの数分前までは

生きていたのだ。


俺はこれ以上この凄惨な光景から

目を背けたくて来た道を走り出した。



だが

俺は気づいてなかった。


これ以上の地獄がこれから始まろうと

していることを。



走る俺の姿を

ジッとみつめる

白いイタチではない

もっと大きな何かを…。











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