戦闘の結果
戦闘は予定どおりに進んだ。隻眼の黒龍、メアリー及びダーク・エルフ航空隊が、戦闘開始早々、既に総司令官のいないマーチャント商会ウェルシー派遣部隊の本営等、指揮系統の中枢に更に壊滅的な被害を与え、これにより、ウェルシー派遣部隊は大混乱に陥った。
ドワーフ傭兵にとっては、和平会談の最中、しかも昼食時に襲われたものだから、完全に不意打ちとなり、有効な対応をとることができなかった。命令や指示も十分に伝わらず、とりあえずは自分の身の安全を最優先して逃げつつ防ぎつつ……
さらに、ガイウスの率いるダーク・エルフの地上部隊が、遠距離からカチューシャ・ロケットのように魔法攻撃を加え、隻眼の黒龍、メアリー及びダーク・エルフ航空隊が、引き続き、空からの攻撃で戦果を拡大していく。
すると、ウェルシー派遣部隊は制御不能となり、早くも潰走を始めた。そこで追い討ちをかけるように猟犬隊と親衛隊が突撃を敢行し、序盤で圧倒的優位にたった。
「楽勝のようですね」
ふらりとマリアが現れた。魔力の性質上、マリアは本営勤務のようだ。
「だったらいいけど」
戦況は基本的に予定どおりに進んでいるとはいえ、現実には、想定の範囲外のことも数多く起こった。例えば、騎士団の参戦が思いのほか遅れたこと。これにより、崩れかかって崩壊寸前となっていたウェルシー派遣部隊に、ある程度、体勢を立て直すだけの時間的余裕ができ、その結果、猟犬隊や親衛隊は強烈な反撃にさらされることとなった。
しかし、遅ればせながら騎士団三千騎が戦闘に参加し、ウェルシー派遣部隊の側面を衝いたことで敵方の反撃も鈍り、再び戦況はこちらの有利に。
ただ、二日酔いのせいか、騎士団が思ったよりもだらしなく、攻撃をかけたのに反対に撃退されてしまう。そのため、少し雲行きが怪しくなってしまった。
マリアはおいしそうに紅茶をすすりながら、
「大丈夫ですよ。きっと勝ちます」
他人のことは言えないが、ドワーフの死体が幾つも転がっているところで、よく落ち着いて飲めるものだ。
それはさておき、世の中、何が幸いするか分からないもので、騎士団は反撃を受けて後退し、ドワーフ傭兵が追い討ちとばかりに騎士団をめがけて突進すると、図らずも、騎士団、猟犬隊、親衛隊でウェルシー派遣部隊を包囲する格好となった。
団子のようになったウェルシー派遣部隊は思うように動きがとれず、外側からは我が方の物理攻撃により戦力を徐々に削がれ、内側には航空部隊やダーク・エルフ地上部隊の魔法攻撃が炸裂。ウェルシー派遣軍は、もはやタコ殴り状態、手も足も出なくなってしまった。
こうして、残り2000人程度になったところで、ウェルシー派遣部隊は、ようやく降服した。




