大虐殺
ドワーフ傭兵たちがラリっていて満足に戦えない今、ようやくチャンス到来。迅速に、ひとり残らず片付けなければならない。ただ、ここでは火器(火炎関係の魔法)の使用は厳禁。煙が立つと、町の外にいるウェルシー派遣部隊に警戒心を起こさせるかもしれないから。
なかなか条件は厳しいが、ガイウスは涼しい顔で、
「我々も手伝おう。エルフが本質的に弓の名手ということを忘れてもらっては困る」
「それは知ってるけど、具体的にはどうするの?」
「我々30人が館の屋根に上り、一斉に矢を射掛ければいい。中庭でラリっている連中が異変に気付く時には、既に半数以上が命を落としているだろう」
ダーク・エルフは、テキパキとした動作で、各々、弓(厳密にはエルブンボウ)と矢を持って屋根に上り、ガイウスの合図で斉射を開始。矢は正確に急所を射抜き、次々とドワーフ傭兵を殺害していく。ガイウスの言葉どおり、ドワーフ傭兵が異変を感じて騒ぎ出した時には、中庭にいる兵力の半数以上を失っていた。
その次に、斧や剣で武装した猟犬隊が中庭に突入し、戦う準備のできていないドワーフ傭兵を次々に斬り殺していく。ドワーフ傭兵の最後の一人が何本もの槍で体を突きぬかれ倒れた時、中庭は、ドワーフの鮮血で真っ赤に染まっていた。
虐殺が終わると、わたしは、返り血を浴びて真っ赤に染まったドーンをつかまえ、
「次は総司令官の番ね。一旦、会談を再開するけど、わたしが応接室から出たら、その後はよろしく」
「わかりました。そのようにいたします」
応接室に戻ると、総司令官は幹部と和やかに談笑していた。外で何が起こっていたのか知らないようだ。総司令官は、わたしに顔を向けると嫌味のつもりか、
「ははは。随分とゆっくりでしたな。部下の説得に時間がかかりましたかな?」
わたしは総司令官のもとに歩み寄り、立ったままニヤリと彼を見下ろした。総司令官はいぶかしげに、
「はて、どうしましたかな?」
「話は変りますが…… 無条件降伏する気はありませんか?」
「はあ? いきなり何を言っておられる。冗談はほどほどにされるがよかろう」
「それでは仕方ありませんね」
わたしはクルリと向きを変え、応接室を出た。部屋の外では、ドーン以下、10人ほどの猟犬隊員が武器を持ってスタンバイしている。猟犬隊員は、わたしと入れ替わりに室内に突入し、司令官その他を血祭りに上げた。
こうして、すべてが終わり、ホッと一息ついていると、
「なっ、なんだ、これは!?」
驚きの声を上げたのは、今ごろになってようやく到着した騎士会執行委員会の連中だった。




