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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第1章 騎士会の要求書
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G&Pブラザーズは今

 借金を返せばマーチャント商会とは縁が切れると思っていたら、そうでもなかったようだ。

「世の中、金とマーケットがすべてか……」

 執務室に戻ると、わたしは、思わず「エイッ」と、うずたかく積まれた書類や帳簿の山を蹴飛ばした。床いっぱいに、書類や帳簿が散らばる。後片付けは大変そうだから、そのままにして、あとでポット大臣に取りに来てもらおう。グローバル資本主義がはびこるところでは、本当に、ロクなことがない。

 プチドラは、わたしをなだめるように、

「まあまあ、強欲な商売人のやり口については、『他山の石』として、今後の参考に……」

「他山の石?」

 なんだか引っかかる言い方だけど、まあ、いいか。

「それよりも、プチドラ、何か、いい考えはない? マーチャント商会に頼らずに済むように。でも、住民を全員ゾンビにして食糧を輸入しなくてもよくする、みたいな、過激すぎるのはダメよ」

「そんな無茶な……」

 プチドラはあきれ顔だ。もちろん、本気で住民をゾンビにするつもりはないけど(サイボーグならまだしも)。


 その時、執務室のドアをノックする音がして、ドーンが両手いっぱいの書類を抱えた若い猟犬隊員を連れて現れた。

「カトリーナ様、実は、報告書の類がこれだけたまっております……が、これは、一体?」

 ドーンは、最初、床の散らかり具合を見て驚いたようだ。しかし、それも一瞬のことで、すぐに、言葉を続けた。

「町の治安状況や、G&Pブラザーズの動き、そして何よりも、背信的な騎士どもの動向などをまとめました。カトリーナ様には、是非、目を通していただきたく」

 G&Pブラザーズ…… そういえば、そんなのもあったっけ。

「ドーン、あのゾンビ事件のあと、G&Pブラザーズはどうなったの? 前より大きくなってるかしら」

「G&Pブラザーズ、あの生意気なシーフギルドですな。あいつらは、なぜか腹立たしい気がしますが、ますます勢いが強くなっています。詳しくは報告書をご覧になっていただけば分かりますが、今や帝国西部のシーフギルドの多くを傘下に収め、非合法のみならず、合法的な商売へも事業を拡大しているそうです」

 ドーンはひととおり説明を済ませると、若い猟犬隊員を連れて執務室を出た。


「プチドラ、することは決まったわ。明日にでも、ミスティアに行きましょう」

 わたしはプチドラを抱き寄せて言った。プチドラは「エッ」と驚き、

「行くのはいいけど、マスター、随分と急だね」

「ドーンが言ってたでしょ。『G&Pブラザーズが、合法的な商売へも事業を拡大している』って。マーチャント商会との取引を停止して、これからはG&Pブラザーズと組むのよ」

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