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謀略の手紙

 わたしは館に戻り、マーチャント商会ウェルシー派遣部隊総司令官と騎士会執行委員長宛にそれぞれ、「要求に応じてもよいから、まずは話し合いをしたい。館までおいでいただきたい」との手紙を書いた。へりくだった言葉を用い、表面上は強気、でも、文面からは、こちらの窮状がにじみ出るように。

 手紙を見たドーンは、

「おお~、なんと言いますか…… 私なら、すっかり騙されてしまいますよ。それで、ヤツらがノコノコと館に出向いてきたところを捕まえて全員を死刑にしたうえで、一気に攻勢に出て敵を殲滅するのですね」

「う~ん、ちょっと違うのよ」

「違う?」

 ドーンは不思議そうな顔をして、わたしを見た。

「マーチャント商会はやっつけるけどね…… 騎士会執行委員長は、『領主を陰謀によって追い落とそうとした罪で訴えるぞ』と脅すの。ポット大臣から押収した手紙が役に立つわ」

「脅して、そして、どうなさるおつもりで?」

「ウェルシー派遣部隊への攻撃に参加してもらう。多分、いえ、ほぼ絶対に断れないわ。そういえば、ポット大臣は、まだ生きてるわよね。あの人、場合によっては、謀反の『証人』になるかもしれないから」

「はい、それはもちろん! 傷ひとつつかないよう、丁重に取り扱っております」


 ドーンは数人の猟犬隊員を呼び、手紙を持たせた。手紙はすぐに届くだろう。どんな返事が返ってくるか楽しみだ。

 猟犬隊員が執務室を出ると、ドーンは、

「ところで、カトリーナ様、宝石産出地帯の混沌の勢力はどうしましょう。今のところ、どうにかこうにか死守していますが、そちらもなんとかしないと……」

「大丈夫よ。もう、ラードはこの世にいないわ。何もしなくても、そのうちにきっと、自然消滅するわ」

 混沌の勢力の背後にラードがいたという確証はないが、確信はある。指導者を失った混沌の勢力は、そのうち、潮が引くように、混沌の領域に引き揚げるだろう。


 手紙の返事はその日のうちに届いた。「それでよろしいのです。それでこそ、英邁な君主。ウェルシーは、未来永劫、栄えるでありましょう」などと、一応、気をつけて言葉を選んでいるようだが、勝ち誇ったような、勝者の驕りがにじみ出ているような感じを受ける。

「なんだか馬鹿にされているようですが……」

 ドーンは面白くなさそうな顔だ。決戦になれば、その時に思い知らせてやればよかろう。

 その後、何度か手紙を持った使者が往復し、「善は急げ」ということではないが、速やかに会談の日時が決まった。明日の午前10時開始、騎士会執行委員長とウェルシー派遣部隊総司令官が出席し、トップ会談で懸案事項を片付けてしまおうという段取りとなった。

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