ラードと元メイド長の最期
ガイウスも、わたしの傍らから、虜にされたラードと元メイド長を見下ろし、
「要望のとおり、生け捕ることはできたが、こいつらを、一体、どうするつもりだ?」
「決まってるでしょ。死刑以外に有り得ないわ。生かしておいてはロクなことにならないから」
ラードとメイド長は、見苦しくも、ジタバタと精一杯の抵抗を見せているが、魔力を封じられ、ヒモでグルグル巻きに縛られていては、どうにもならない。
「キィー! このわたしが、こんな小娘ごときに!!」
元メイド長はヒステリックに叫ぶ。今更謝っても(謝る気はサラサラなさそうだが)許してやらない。
一方、ラードは急に神妙な態度になり、
「ちょっと待ってほしい。私を本当に殺すつもりなのか?」
「当然でしょ。罪状を挙げていけばきりがないし」
「いや、よく考えてほしい。私の魔法の腕前はあなたも御存知のはずだ。もし、ここで私を許し、臣下に加えることにすれば、あなたにとっては非常に強力な戦力になろう。天下を狙う英雄は、私怨など意に介せぬものだ。きっと、あなたの役に立ってみせる。約束する」
ラードは必死になって訴えた。プチドラはわたしの腕の中からわたしを見上げ、ドーン、メアリー、マリア、ガイウスも、わたしがどのような判断を下すのかと注目している。なんだか、古典的な中国の某豪傑とソックリな感じも受けるが、それはご愛嬌というものだろう。いずれにせよ、結論は動かない。
わたしは極めて事務的に、
「死刑。今すぐ執行せよ」
すると、ラードも元メイド長も、とうとう観念したのか、暴れるのをやめた。
「あの~……」
マリアが小さく手を上げて言った。
「ハーフ・オークの処刑はお任せしますが、元メイド長は、ぜひ、わたしの手でとどめを……」
「構わないわ。斬首でも絞殺でもなんでもいいわ。方法は任せるから」
グレートガーデンで何があったのか知らないけど、この機会に恨みを晴らすのもいいだろう。
ただ、ここは学院内なので、教育的配慮から、死刑の執行は、町の大通りに場所を変え、公開で行われた。腕っ節の強い猟犬隊員を集め、とにかく殴りまくるという方法。マリアは角材を振り上げ、元メイド長の脳天に「これでもか、これでもか」と叩きつけている。少々時間はかかったが、しばらくすると、ラードと元メイド長は完全に息絶えた。
「でも、元メイド長はともかく、ラードはこれくらいで本当にくたばったと言えるかしら」
わたしは目の前で死刑執行の現場を見ているにもかかわらず(凄惨な場面のはずだけど、見慣れてくると意外と平気)、まだ疑心暗鬼。
すると、ドーンは「ひっひっひっ」とサディスティックな笑いを浮かべ、
「それでは、ラードの死体をバラバラに切り刻み、ブタのエサにしましょう」
こうして、毎度お騒がせのラードと元メイド長は、はかなくも短き一生を終えることとなった。




