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飛んで火に入る

 ガイウスたちは、空を飛び、あるいはテレポートを繰り返し、ミーの町に到着すると(つまり、騎士団やマーチャント商会の包囲は妨げにならない)、まずは現況の調査を始めたという。

「『調べておきたい』って言ったけど、どのように? 騎士やドワーフに変身して、堂々と内情を探りに行ったとか??」

「いや、そんな危険なことはしない。野ネズミをつかまえて使い魔にしたのさ」

 事もなげにガイウスは言った。野ネズミを催眠状態にして完全に意のままに操り、感覚を共有するという魔法らしい。使い魔となった野ネズミが、マーチャント商会ウェルシー派遣部隊や騎士団の内部に忍び込み、情報を収集するという、安全かつ合理的な方法。

「そんなこともできるのね。それで、分かったことは、どんなこと?」

「いろいろとあるんだ。長い話だけど、全部聞く?」

「いえ、とりあえず、細かいところは省いて主要な部分だけ……」


 ガイウスの話によると、騎士団もマーチャント商会も、圧力をかけて各々の要求を呑ませることが目的であり、戦闘に入りたくないのが本音だとか。特にマーチャント商会は、死傷者が出ると保険金の支払いなどコストがかさむので、会長から「極力、味方の犠牲を出さないように」と厳命されているらしい。このようなことは、前々から、大体予想がついていたことだけど、これでハッキリと確信を持てた。

 また、騎士団もマーチャント商会も、今のところ、互いに別々に(つまり己の利益を最大化するよう)動いており、連携をとろうとは考えていないとのこと。これは、新しい、しかも重要な情報といえよう。

 気になるのはラードや元メイド長だけど、両方とも、騎士団やマーチャント商会の陣中では見かけなかったとか。しかし、騎士やドワーフ傭兵の雑談の中で名前は挙がっていたということだから、ラードとメイド長が解雇あるいは解任されたという話は本当のことだったのだろう。


「来ました、禍々しい魔力が二つ。噂をすれば影です。」

 突然、マリアが言った。「禍々しい」ということは、いつものように、ラードと元メイド長だろう。でも、いつもと違い、こちらには腕利きのダーク・エルフ30人がいる。飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ。ただ、少し心配なのは、マリアが気付いているということは、当然、相手の方も……

「せっかく来てくれたのはありがたいけど、強力な魔法使いが30人もいれば、相手に魔力の気配を察知されて逃げられるかも……」

 すると、ガイウスは「ハハハ」と乾いた声で笑い、

「それは、あり得ない。マリアさんの感知能力は、エルフの中でもとび抜けて強力だからね。我々だってそうだが、誰がどこにいるかは、普通、相手の姿を見るまでは分からないものだよ」

 心配は杞憂だったらしい。ということは、今日こそラードと元メイド長の最期だ。

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