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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第1章 騎士会の要求書
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ぼったくり価格

 わたしは書類や帳簿の山から、適当に目についた帳簿を手にとった。表紙には「取引記録(マーチャント商会)」と書かれている。ページをめくっていくと、当たり前だけど、目がチカチカするような数字の羅列が続く。

 プチドラもその帳簿をのぞき込んだ。しかし、すぐに音を上げ、

「マスター、止めようよ。目が悪くなるだけだよ」

 会計帳簿はプチドラの体質に合わないようだ。ただ、能力値のパラメータ的には、ドラゴンの知性はヒューマンをはるかに凌駕しているはず。必要なことは記憶すればよいということで、ドラゴンには、もともと、記録に残すという習慣がないのだろう。

 帳簿とにらめっこをしているうちに、ふと、おかしなことに気付いた。

「プチドラ、ちょっと、これを見て。これって、本当に計算が合ってるの?」

「ええ~~」

 プチドラは露骨に不服そうな顔をしながらも、しぶしぶ帳簿に目を通すと、

「合ってるか間違ってるかは分からないけど、確かに、一般的な相場からは少々乖離しているみたいだね」

 違和感を感じたのは、宝石と食糧の交換レートだった。すなわち、宝石を不当に安く買い叩かれ、食糧を高値でつかまされているような気が……


 わたしはプチドラを抱き、帳簿を持って、ポット大臣のいる事務室に向かった。すると、大臣は今回も、

「ひぃ~、お許し下さい」

 面白い人だけど、こう何度も謝られると、かえって面倒な気がする。

「まだ何も言ってないわ。それよりも、この帳簿を見て。これって、おかしくない?」

 わたしはポット大臣の目の前に帳簿を開いた。

 大臣は帳簿にしげしげと目をやり、

「これは、おかしくはないですよ。もともと、こういうものと言いますか……」

 ポット大臣によれば、宝石が安くて食糧が高くなっているのは不思議でも異常でもなく、宝石の価格をそれ以上に上げれば買ってもらえず、食糧の価格をそれ以下に下げれば売ってもらえないという、市場のルールに則った結果とのこと。でも、いくら市場のルールといっても、食糧に比べて宝石は割安すぎないだろうか。

「仕方ないんですよ。その価格でないと、マーチャント商会は取引してくれないですから」

「マーチャント商会……って、借金以外に何か関係があるの?」

「この辺りの交易は、マーチャント商会の隊商が独占しているんです。宝石を売ろうにも、食糧を買おうにも、彼らに頼らざるを得ないんです」

 要するに、こちらには、マーチャント商会の言い値を受け入れるか断るかの選択権しかないらしい。また、マーチャント商会には、別途、「運送費用」を納付しなければならず、マーチャント商会が地域独占によるぼったくり利潤を享受しているとのこと。

「それじゃ、マーチャント商会とは手を切りましょう。業者はマーチャント商会だけじゃないでしょ」

「無理です。この辺りの辺境の地まで広域的に活動領域にしているのは、マーチャント商会以外ありません」

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