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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第8章 祖国(!?)は危機に
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ポット大臣の自白

 ドーンが取り出した手紙には、ポット大臣と騎士会執行委員長のやりとりが書かれていた。どのようにして見つけたのか知らないが、猟犬隊も意外とまともに防諜組織としての仕事をしているようだ。

 手紙の内容は、腹立たしいことに、「ポット大臣が我々の側につき、あの性悪の小娘の極悪非道ぶりを示す証拠を集めてくれれば、巨額の礼金を約束する」とか、「このまま圧力を加え続ければ、いずれ、あの性悪な小娘も音を上げるに違いない」とか、「証拠が揃ったところで訴えて、貴族の身分を剥奪し、あわよくば奴隷として売り飛ばそう」とか、公序良俗違反も含め、言いたい放題。


 わたしはキッとポット大臣をにらみつけ、

「こんなことをして、どうなるか分かってるんでしょうね」

「ひぃ~~、どうか、命ばかりはお助けを…… これは実は、騎士会執行委員長から一方的に送られてきたもので、私は、あなたさまのことを、『性悪の小娘』とか、『薄汚い魔女』とか、そんなことを思ったことは、一度として、ありません~」

「やっぱり、あなたもそう思ってたのね。絶対に許さないから」

 わたしは「ふぅ」とひと息。「語るに落ちる」とは、このことだろう。

 ポット大臣は、目を大きく見開き、土気色になって、

「どうか、どうか、お許しを、カトリーナ様!」

 この場でポット大臣が自白したところよれば、騎士会執行委員長とポット大臣は実は古くからの友人であり、大臣は、「専ら公益的な動機」により今回の騒動を血を見ずに収拾するため、独断で水面下の交渉、すなわち、定期的な手紙のやりとりを行っていたそうだ。

「とりあえず、ポット大臣を地下牢にでも閉じ込めときなさい」

「分かりました。早速、そのとおりに」

 ドーンが合図を送ると、配下の猟犬隊員は、ぐるぐる巻きにされたポット大臣を引きずって執務室を出た。

「どうか、どうか! 命ばかりは!!」

 ポット大臣の必死の訴えが、廊下から執務室に響いていた。


 執務室にわたしとドーン(加えてプチドラ)以外にいなくなると、ドーンはわたしに近寄り、耳元で、

「カトリーナ様、どうしてポット大臣を生かしておくのですか?」

「生かしておくと決めたわけじゃないけど……」

 どうしても大臣を死刑にしなければならないわけではないし、もし処刑すれば、大臣クラスの重臣の裏切りが明らかになり、味方に動揺を来たすかもしれない。ドーンは考え方が単純に過ぎる。

「ぶっ殺すだけが脳じゃないわ。それに、生かしておけば、何かの時に使えるかもしれないから。だから、拷問や虐待は禁止。脅かす程度なら構わないけどね」

「そうですか。う~ん、そんなものですかねぇ」

 ドーンは、いかにも残念そうな顔で言った。

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