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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第8章 祖国(!?)は危機に
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兵糧攻め

 マーチャント商会と騎士団の包囲の輪は狭まり、とうとうミーの町を完全に包囲してしまった。しかし、両者とも積極的に攻勢に出ようとはせず、町の手前で停止し、「出入り禁止令」を廃止してほしいという「要望書」を毎日のように送り届けてくるだけ。この期に及んで「要望書」なんて、どういう神経をしてるのだろう。

 その一方で、宝石産出地帯における混沌の勢力との戦闘、ラードと元メイド長のゲリラ的な空襲は続いていた。「要望書」の返答にかこつけて、ラードと元メイド長の逮捕及び処罰を要求したところ、すぐに、騎士会執行委員長名とウェルシー派遣部隊総司令官名で、それぞれ書状が返ってきた。

 騎士会執行委員長によれば、「騎士団は、今現在、ラードとは無関係であり(かつてラードを騎士会執行部の事務員として雇用していた事実はあるが、任務懈怠、職務命令違反等を理由に解雇した)、混沌の勢力とは、過去も現在も未来も、交流することなどは絶対に有り得ない」とのこと。マーチャント商会も同様に、「元メイド長は、先日、マーチャント商会会長より軍監を解任されたので、今現在の元メイド長の乱暴狼藉はマーチャント商会とは一切関係がない」と主張している。

 いっそのこと、隻眼の黒龍、エルフ姉妹、親衛隊の精鋭をくり出して先制攻撃をかけてみたい誘惑に駆られるが、マーチャント商会はともかく、騎士団相手に議論を打ち切って流血を伴う実力行使を合法的に行うためには、ポット大臣でも納得するような正当化理由が必要。すなわち、戦争に訴えることは不可能ではないが、それは政治的には困難という、なんとも微妙なことになってしまった。


 さらに……

「カトリーナ様、かなりまずいことになりました」

 ポット大臣が帳簿を持って、深刻な顔で執務室にやってきた。

「どうしたの? 『まずい』って……」

「実は、この国の食糧自給率がほとんどゼロに近いのは御存知かと思いますが……」

「そうだったわね。それが何か?」

「早い話、食べるものがないということなのです」

 ポット大臣によれば、ミーの町がマーチャント商会と騎士団に包囲されたため、「アーサー・ドーン及びG&Pブラザーズ株式会社」の隊商が町に近寄らなくなり、食糧の供給が途絶えてしまったとのこと。

「あらら…… 兵糧攻めを食らっちゃったか」

 最初から狙っていたのか、偶然そうなったのかは分からない。でも、このままいつまでも町にこもっているわけにはいかないことは確か。

「大臣、食糧はいつまでもつの?」

「兵糧としての備蓄は、あと1ヶ月分程度です。ただ、住民の分については分かりません。市中では、超ウルトラハイパーインフレ的に物価が上昇しているという話も聞きます。いずれにせよ、ムチャクチャまずいです」

 それにしても、「超ウルトラハイパー」って…… すごい形容詞だね……

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