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なんとなく戦時体制

 しばらすると、メアリーと隻眼の黒龍が戻ってきた。メアリーは静かに執務室の床に着地し、隻眼の黒龍は器用に体を縮めながら窓枠をくぐり抜け、子犬サイズのプチドラとなって机の上に降りた。両方とも、怪我などはなさそうだ。

「どうだった?」

「はい、なんとか……」

 と、メアリーは額の汗をぬぐった。ラードと元メイド長が空中から町を魔法で攻撃していたが、今回は隻眼の黒龍と共同で迎撃し、とりあえず追い払うことができたとのこと。ここで気になることといえば、ラードと元メイド長、言い換えれば、騎士団とマーチャント商会が手を組んだかどうか。

「メアリー、見た感じは、どんなだった? あいつら、最初から共謀してたのかしら?」

「正確には分かりませんが、聞こえてきた会話などから考えれば、事前に示し合わせてというよりも、たまたま一緒になったという、通常では絶対に有り得ない偶然のように見えましたが……」

「うん、即席のタッグチームみたいだったな。でも、その割には、なかなかのチームワークだったよ」

 プチドラはタオルをかぶり、汗を拭いて言った。「気分爽快、久しぶりに、いい汗をかいた」みたいな。

 でも、仮に今回は偶然でも、結果的に、ラードと元メイド長は共闘することとなったということは、今後は、彼らが相互に連絡し合って、つまり騎士団とマーチャント商会が(裏で)つながっているものと考えるのが無難かもしれない。


 このところ、状況は悪化するばかり。流れの悪いときはこんなものだ。総合商社の許可をもらう辺りでは、何をするのもうまくいったものだが、どこでこんなに悪くしてしまったのか。でも、悲観してばかりはいられない。

「ドーン、町の住民の動揺を抑えなさい。ラードと元メイド長が余計なことをしてくれたからね。『戒厳令』までは必要ないと思うけど、この前に出した『出入り禁止令』を徹底するという名目で、適当にうまくやって頂戴」

「分かりました。猟犬隊員に、その旨を徹底します」

 ドーンは拳で胸をドンと叩き、喜び勇んで執務室を出た。先程までの動揺は影を潜め、今は、「エンジン全開、バリバリと仕事するぞ」みたいな。みせしめに、住民を何人かぶっ殺すつもりだろう。この男、ひょっとすると、弱いものイジメが大好きなサディストではないだろうか。

 わたしは執務室の椅子に腰を下ろし、

「この分では、商売は上がったりね」

 せっかく総合商社を設立したのに、宝石産出地帯では混沌の勢力と交戦中、さらにマーチャント商会が本格的に国境付近に攻め寄せたのでは、商売どころではない。一応、理論的には、戦争を原因とする商取引の停止によって発生した損害を、わたしとG&Pブラザーズのどちらが被るかという話になるかもしれないが、ともあれ、今は、この急場をしのぐ方法を考えなければ。

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