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騎士団を殲滅したいけど

 ドーンは不安げにわたしの顔を覗き込み、

「カトリーナ様、いかがいたしましょう。まさか、あのラードが生きていたとは……」

「仕方ないわね。あいつは7回殺しても死にはしないわ。まずは騎士団から、なんとかしましょう。デモ行進を反逆とみなして、騎士団を殲滅することにします」

「おおっ! カトリーナ様!! ようやく決心されましたか!!!」

 ドーンは小躍りして拳を突き上げた。

 しかし、ポット大臣は、おずおずと、

「それはちょっと…… もう少し穏やかな方法は、ありませんか?」

「どうして? ラードが騎士団についてるのよ。早く片付けないとマズイわ」

「はい、おっしゃることはごもっともなのですが、先ほどの発言はラード個人の見解であり、騎士団として公に反逆の意を示したということではないのです。罪ある者を誅戮するなら認められますが、そうでなく……」

「つまり、懲罰の理由とか反逆の証拠が必要なのね」

「はい、そのとおりでございます。なんの罪もないのに臣下を虐げたとなると、これは違法行為、もっと言えば、犯罪行為となる可能性もあり、皇帝陛下の名の下にどんなお咎めがあるやも知れず……というわけです」


 困ったものだ。法的には、皇帝の前でわたしと騎士は対等ということになっているらしい。すなわち、日本企業のように何をしても構わない隷属的主従関係ではなく、限定された権力を行使できるに過ぎない西欧風の契約関係が基本。騎士の任免も完全に自由にはならない。皇帝を頂点とする統治システムは、(政治権力としてみれば、皇帝自身はそれを有しない、言わば完全な「無」の存在であるにせよ)皇帝の権威としては世間一般に法的確信をもって受け入れられている以上、ないがしろにできない。

「分かったわ。それじゃ、この前に任命した騎士団長、ゴールドマンの息子を呼んで、すべての騎士への『自宅待機命令』を出させましょう。命令に違反してデモを続けるなら罪に問えるでしょ」

「う~ん、それはどうでしょう。騎士団が要求を掲げて町に集まるのは、そもそも職務の範囲外なのです。騎士団長の命令は、職務の範囲内のことに限られますから、その命令は、無効ということも考えられます」

 難しいことを言う。そもそも騎士団がデモ行進を行うこと自体、違法ではないかと思うのだけど、ポット大臣によれば、デモ行進も平時であれば、法的意味のない事実行為として、問題とされないらしい。

「それじゃ、一般的な警察権の行使ということで、とりあえず町の門を閉じて、特別の許可がある者を除き出入り禁止にしましょう。騎士団が無理矢理町に入ろうとすれば、『禁を犯した』ことになるでしょ」

「多少、苦しいですが、一応、理屈としては、成り立つように思いますが……」

 渋々ながらではあれ、ようやくポット大臣も納得してくれたようなので、わたしはすぐに「出入り禁止令」を発令。ドーンはポット大臣を睨みつけ、悔しそうに執務室を出た。

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