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交渉は体力勝負

 気が進まないが、とりあえず団体交渉に応じることにした。騎士全員を解任し、ついでに財産も没収したいところだけど、騎士の任免には皇帝の同意が必要で、手続は相当に面倒ということだから、仕方がない。今なら、帝国宰相に頼み込めば、なんとかなるかもしれない。でも、足元を見られそうだから。

 交渉の場所は、前回と同じく館の応接室。今回は早めに席についてプチドラを膝に乗せ、エレンとともに騎士会執行委員が来るのを待っていた。やがて、廊下の方でガヤガヤと声がして、応接室のドアが開く。

「ああ、これはこれは、カトリーナ様の方が先にいらっしゃったとは、失礼いたしました」

 と、レッドポール執行委員長。さらに、騎士会執行委員メンバーがゾロゾロと続き、程なくして全員が席に着いた。


 わたしとしては、結論は最初から決まっている。ここは相手が喋りだす前に、

「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。要するに、あなたたちの要求は認められない。以上」

 しかし執行委員長は手馴れたもので、顔色ひとつ変えず、

「いやいや、お互いに言い分はあるのです。それを言い合うだけでは、争いはいつまでたっても解決しない。双方が互譲の精神をもって、主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲り……」

 またまた執行委員長の長い話が始まった。本当に、よく話が続くものだ。話を長引かせ、相手が疲れるのを待つ、すなわち、相手方が音を上げて要求を呑むまでの体力勝負ということだろう。

 ひととおり、執行委員メンバーを見渡してみると、前回と同じ顔ぶれのようだ。いかにも怪しさ大爆発、安っぽい仮面の男も末席に行儀よく腰掛けている。


 交渉は夕方まで続いた。さすがに最後の方は、執行委員長の声もかすれ気味。この辺りが限界だろうか。

「長々とお話をいただきましたが、結論は変りません。以上」

 わたしはプチドラを抱いて立ち上がり、エレンと一緒に部屋を出ようとした。すると、執行委員メンバーが色をなして立ち上がり、わたしとエレンを取り囲んだ。

「どういうつもり? わたしたちをこの部屋から出さないとでも? ほとんど犯罪行為ね」

 レッドポール執行委員長は、「やめろ」とメンバーを制止し、

「失礼いたしました。なにぶん、血の気の多い連中でございましてね。それはともかく、我々としましては、要求は正当なものと認識しているわけでございます。認めていただけないのは残念でございますが」

 イライラしてきた。わたしは執行委員長の話を途中で遮り、

「要求には応じない。結論が出ている以上、交渉の余地はないわ。これが回答。あなたたちにとっても用が済んだはずよ」

「ほぉ~、そうですか。しかし、いずれ後悔することになりますぞ」

 ようやく諦めたのだろうか、執行委員長及びその他の執行委員は、(形だけは)恭しくわたしに一礼し、ぞろぞろと応接室を出ていった。

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