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宴会が終わって

 ニューバーグ男爵は、わたしをにらみつけ、

「一体、どういう了見ですかな! 私は不覚にも眠ってしまったが、気がつけば、ウェルシー伯、あなたの屋敷で宴会ですか。しかも帝国宰相と。どういうことか、説明していただきたい」

 すると、ツンドラ候は巨体を揺らせてニューバーグ男爵に歩み寄り、

「まあまあ、そうカリカリするなよ。見てのとおりだ。この俺様が、帝国宰相の兄貴分になったんだ」

「兄貴分ですと!? わけが分かりませんよ。え~っと…… 少々言いづらいですが、我々の今の立ち位置を考えれば、帝国宰相と会食などとは……」

「そんな難しい話じゃない。俺様と帝国宰相が兄弟分ということは、これからは、一心同体だな。つまり、そういうことだ」

 ニューバーグ男爵はガックリと崩れ落ち、「ああ」と天を仰いだ。

 ツンドラ侯の傍らでは、帝国宰相が腕を組み、ウンウンとうなずいている。宰相は適当にツンドラ候をおだてながら、うまく扱うだろう。多分、誰から見ても、事もあろうにアンチ帝国宰相派のリーダー格が「裏切った」ように映ると思う。

 こうして、「ツンドラ候と帝国宰相に仲良くなってもらうための夕食会」は成功裡に終わり、ツンドラ候も帝国宰相も大いに満足して帰途についた。


 その後、ツンドラ候と帝国宰相が兄弟分になったという話は、信じがたいスピードで貴族の間に広がり、2、3日のうちに、(貴族では)知らない者はいなくなった。どこに行っても、貴族が集まればその話ばかり。中には尾ひれが付いて、「実はツンドラ候は帝国宰相の隠し子だった」みたいな、とんでもない話もあるが、とにかく、ツンドラ候と帝国宰相が手を結んだという事実は広く周知されたことになる。


 わたしは地下室で、ガイウス、クラウディアと、恒例の午後のティータイムを楽しんでいた。

「ありがとう、いろいろと助かったわ。もう少し帝都にいたいけど、そろそろ国に戻らないといけないわ」

 総合商社の開業準備期間は1ヶ月。その間に戻らなければならない。

 クラウディアは、「はぁ」とため息をつき、

「それは残念です。次に会えるのは、いつになるのかしら」

「国で仕事が片付けば、時々、こちらに来ようと思うの。でも、片付くまで時間がかかるかもしれないわ」

 総合商社の事業が軌道に乗るまでは面倒なこともあるだろう。騎士会との決着はついていないし、混沌の勢力の動きも気がかり。しばらくは国から出られそうにない。帝都で済ませられることは済ませていかなければ。そういえば、マーチャント商会への絶縁状は、まだ出していなかった。

「ねえ、クラウディア、帝都にマーチャント商会の支店はある?」

「いえ、支店ではなく、本社があります。商業地域で一番目立つ建物なので、多分、すぐに分かりますよ」

 そういうことなら、早速、行ってみよう。

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