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兄弟分

 わたしがパンパンと手を叩くと、使用人がブラックスライムとトログロダイトの入った器を持って宴会場に入ってきた。ツンドラ候はよだれを垂らし、身を乗り出している。

「うぉー! まだか!? 早く! 早く食わせろ!!」

 長いことゲテモンを食べていないせいか、待ちきれないようだ。それとは対照的に、帝国宰相は、どことなく不安げな面持ち。

 使用人がグラスにブラックスライムを注ぎ込み、トログロダイトのテールスープを取り分けると、ツンドラ候は、どちらも一口で自分の胃袋に流し込み、

「うおぉぉぉーー! これだぁ!! これこそ、俺様の求めていた!!!」

 どんな味覚をしているのか知らないが、こんなに喜んでくれるのなら、

「まだまだ、おかわりはありますから、気が済むまで召し上がってください」

「おおぉ! そうか!! やはり、持つべきものは友達だなぁ!!!」

 なお、ツンドラ候の隣では、帝国宰相が泡を吹いて気絶していた。


「いやぁ~、はっはっはっ、今日は久々に、本来の俺様に戻れたような気がするぞ」

 ツンドラ候は腹をポンと叩き、ご満悦の様子。余程気に入ったのか、ブラックスライムもトログロダイトもほとんど一人で食べつくしてしまった。一方、帝国宰相は冷水で濡らしたタオルを額に当て、グロッキー状態。なお、わたしは今日は元気。口をつけないのは正解だった。

「帝国宰相とツンドラ候は随分と打ち解けていらっしゃったようですが、これを機に、もっと親交を深められるのがよいと思います」

「そうだな、そうしよう。それに、ゲテモンを食わしてくれるのなら、俺様としては大歓迎だ」

「ゲテモンについては、いずれまた。それはそれとして、ツンドラ候、一つ提案があるのですが……」

「提案? ゲテモンを食わせてくれるなら、俺様はいつでも構わないぞ。次はいつだ?」

「いえ、ゲテモンは材料が揃った時に(そう何度も用意できるわけがないだろう)。提案というのは、つまり、帝国宰相とツンドラ候で長く誼を、あるいは、兄弟分などになられてはどうかと思いまして……」

 すると、今までほとんど意識不明だった帝国宰相が、突如として、額に当てられたタオルをはねのけて立ち上がり、

「義兄弟ということかな。わしには異存はないぞ。むしろ、是非ともお願いしたいくらいじゃ!」

「おお、そうだな。それはいい考えだ。賛成。もちろん、俺様が兄貴分だ」

 と、ツンドラ候。こうしてめでたく、ツンドラ候と帝国宰相には仲良くなってもらうことができた。なお、帝国宰相は、弟分とされたことに異存がないわけではないが、この際だから仕方がない、といった雰囲気。


 しかし……

「ちょっと待ったー! そんな話は、認められな~い!!」

 血相を変えて別室から駆け込んできたのは、ニューバーグ男爵だった。今更どうあがいても手遅れだけど……

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