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露骨に「よいしょ」

 久々にゲテモンを賞味できるとあって、ツンドラ候は、先刻まで首をくくりそうな顔をしていたのがウソのように御機嫌になった。熟睡しているニューバーグ男爵を軽々と馬車に乗せ、わたしの屋敷に向かう。次に男爵が目を覚ます時には、既に話がついているはずだ。握手するツンドラ候と帝国宰相を見て、一体、どんな顔をするだろう。

 なお、「単細胞」のツンドラ候は、「今晩は帝国宰相と一緒に会食する」という話をしたときに、何を勘違いしたのか、

「テーコクサイショー? 楽しみだなぁ。想像もつかない。どんな味だろう」

 宰相は食べ物ではない(食べたければ食べてもいいけど)……

 と、いうわけで(程なくして帝国宰相も屋敷に到着し)、名付けて「ツンドラ候と帝国宰相に仲良くなってもらうための夕食会」が始まるのだった。


 そして……


「はっはっはっ、おまえ、いいヤツだったんだなあ。今まで誤解していたよ」

 ツンドラ候は、はやばやと出来上がっていた。というのは、最初から、ガイウスが気を利かせて用意してくれたエルフの銘酒を、浴びるように飲んでいたから。

「いやいや、わしなどは、たまたま運がよくて成り上がっただけに過ぎぬ。君のような昔からの大貴族には、品格からして、到底及ばぬのでな……」

 帝国宰相はうまく話をあわせ、露骨にツンドラ候を「よいしょ」している。

「はっはっはっ、実に気分がいいな。もっと誉めてくれよ。自慢じゃないが、この俺様、『無敵のエドワード』は、喧嘩でも戦争でも、今まで一度も負けたことがないのだ」

「それは頼もしい。君のような豪傑と、こうして酒を酌み交わすことができるのは、実に光栄なことじゃ」

 どうでもいいことだが、ツンドラ候はリザードマンに負かされたことを、すっかり忘れているようだ。


 宴会は続く。ノリノリのツンドラ候は、BGMを演奏していた楽団員から楽器を一つ取り上げ、

「協奏曲だ! みんな、俺様に合わせろ!!」

 誰しもが呆気にとられている中で、ひとり、聞くに堪えない雑音を立てて悦に入っている。帝国宰相はツンドラ候に合わせ、指揮者からタクトを取り上げて音頭をとっているが、とっても渋い顔。もうそろそろ頃合だろう。このままツンドラ候のやりたい放題が続けば、そのうちに大暴れ、屋敷をぶっ壊されるかもしれない。

 では、いよいよ今日のメーン・イベント(よい子は絶対にマネをしてはいけない)。わたしはおもむろに立ち上がり、ツンドラ侯と帝国宰相に一礼し、

「お待たせしました。ようやく準備が整ったようでございます。本日のメーンをお持ちしますので、着席して、しばらくお待ちを……」

「うおぉー! 待ってたぜぃ!!」

 ツンドラ候は、キャッキャッキャと、本当に子供みたいに……

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