ようやく見つけた
パーシュ=カーニス評議員と別れてしばらく、半分はあきらめながら、宮殿内を探し回っていると、
「マスター、あれ!」
プチドラが声を上げた。その指差した先には、昨日とは打って変わって堂々とした帝国宰相の姿があった。宰相は背筋をピンと伸ばして胸を張り、その威風は辺りをなぎ払っていた。気合を注入した形になったわたし自身も、ビックリするくらい。
「気の持ち方によって、こうも変わるなんてね……」
やがて、帝国宰相もわたしを見つけたのだろう、手を高く挙げ、
「おお、我が娘よ! 今日は早かったな」
「帝国宰相、お元気そうで、何よりです」
帝国宰相は鋭い眼光でギロリとわたしをにらみ、
「ははは、お世辞は言わぬでもよい。おまえのことじゃ、早々に利益を確定しに来たのであろう」
そして、宰相は丸めた書状を取り出し、それをわたしの目の前で広げた。
「見るがよい。これが総合商社の営業許可書じゃ。これで満足かな?」
書状には、大きく「営業許可書」と書かれ、皇帝の印璽が押されている。
プチドラは身を乗り出して書面を確認し、わたしの耳元でささやいた。
「マスター、これは正真正銘の本物だよ。合法的に商売ができるよ」
こうして、さしたる苦労もなく、帝都に来た目的を果すことができたわけで、あとはプラスアルファの部分。帝国宰相とツンドラ候に「仲良く」なってもらおう。
「ありがとうございました、帝国宰相。このご恩は、一生忘れません」
「いや、この程度のことは、なんの造作もないぞ」
「そこで、お礼と言いますか、もし、ご都合がよろしければ、今晩、わたしの屋敷で帝国宰相をおもてなししたいと思うのですが、いかがでございましょう?」
「いやいや、礼には及ばんよ。このくらいのことなら、わしにとっては、鼻をかむ程度のことじゃが……」
帝国宰相の目が妖しく光った。「今回の『貸し』を晩餐くらいでチャラにされたくない」ということだろうか。でも、ツンドラ侯を交えての晩餐会だから、営業許可書なら数十枚分くらいの価値があるはずだ。
「まあまあ、そんなことはおっしゃらずに。これはわたしの気持ちですから」
「いや、気持ちということなら、気持ちだけ、ありがたくいただいておこう。それで十分ではないか」
おそらく、こういうやりとりは百戦錬磨の帝国宰相、なかなか話に乗ってこない。
そこで、わたしはガッカリした表情を作って「ふぅ」とため息をつき、
「残念ですね。今晩はツンドラ候もお招きして、大いに盛り上げようと思っていましたのに……」
その瞬間、帝国宰相の顔色が変わった。そして、今までよりも一層、険しい顔つきになって、
「おまえは一体、何を考えておるのじゃ? わしをどうする? ここいらで、本心を明かしてくれてもよかろう」




