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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第5章 帝都の下水道網
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魔法アカデミーの在り方

 探しているときに限ってその人に会わないのは、往々にしてあること。ただ、それが2回目となると、怒りのボルテージが上昇するのは仕方がない。言葉遣いからしても、

「あのジジィ、一体、どこに行ったのかしら」

「まあまあ、それが世の中ということもあるし、短気は精神衛生上もよくないよ」

 プチドラに言われなくても分かっているが、どうにもならないのだから仕方がない。そもそも、そういった感情から自由になれるなら、とっくに世間を見限って世捨人になっていると思う。

 こんな感じでカリカリしながら宮殿内を歩き回っていると、

「ん? あなたはウェルシー伯。奇遇ですな。今日は宮殿に何か御用ですかな」

 後ろから声をかけられ、振り向くと、そこには、今回はお呼びでもないのにパーシュ=カーニス評議員が立っていた。


「パーシュ=カーニス評議員。ご無沙汰しておりました。お変わりなさそうで、なによりです」

「あなたも相変わらずのようですな。なべて世はこともなし。泰平を愉しむ心の余裕がほしいものですな」

 実にパーシュ=カーニス評議員らしい謎かけのような言い回し。いつもながら、この人の考えていることは、よく分からない。帝国宰相とは仲がよくなさそうだったけど、

「素朴な疑問ですが、パーシュ=カーニス評議員は、ぶっちゃけ、帝国宰相と、どのようなご関係で?」

「ハッハッハッ、何を言い出すかと思ったら……」

 いきなり評議員は笑い出した。でも、極めて自然というか、あまり嫌味な感じはしない。

「一言で言えば、『無関係』ということに尽きますな。あの爺さんがどうなろうと、私の知ったことではないし、その逆も然り。ただ、個人的な感情を言わせてもらえば、多少、『鬱陶しい』ということはありますがね。我々の仕事は皇帝を守護し奉ること、言い換えれば、帝国の国体護持です。極端な話、帝国宰相がどんなにイヤなヤローでも、職務上、そんなことは問題にならないわけです」

 ハッキリと口には出さないが、内心では、帝国宰相を嫌っているのではないか。それよりもむしろ、あからさまな侮蔑がミエミエのような感じもしないではない。


 別れ際、わたしはうっかりと……というか、なんの脈絡もなく言ってみたくなることは、よくあること。つい、パーシュ=カーニス評議員の耳元で、

「巷の噂ですが、仮に魔法アカデミーが一致団結し、その力をもって帝国宰相を……」

 すると評議員は、慌ててわたしの口を押さえ、

「おやめなさい。滅多なことを言うものではありませんぞ。政治には一切関与しないのが、魔法アカデミーの古来よりの在り方。そのような政治的中立性が存立の基盤なのです。だからこそ、時の政権に翻弄されることなく、長きにわたり安定した地位を占めることができた。多少、難しいかもしれないが、そういうことです」

 パーシュ=カーニス評議員は、涼しい顔をして去って行った。政治には一切関与しない、それもひとつの生き方だろう。

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