意外と費用が
そして一夜明け、今日は、帝国宰相から総合商社の許可書を受け取る日。もちろん、そればかりではなく、適当に理由をつけて帝国宰相とツンドラ候を屋敷に招き、「手打ち」をしてもらおうという計画もある(日程の都合がつかない場合には、順延も止むを得ないが)。
と、いうわけで(なんなんだ?)、とりあえず、執事や使用人を集め、一応、訓示らしいことを一言……
「え~っと…… 今日は、帝国宰相とツンドラ候が、この屋敷においでになり、無礼講の大宴会にて、問答無用、なんでもありのワンダーランド、一大スペクタル(これは言いすぎか)、というわけだから、多少は屋敷がぶっ壊れても構わないので、みんな、場を盛り上げるように……」
…… オオーーー!!! ……
ツンドラ候が来るということで少し心配だったけど、使用人たちは、とりあえず気合十分。主人の栄光が従僕の栄光と同視できるのであれば、そういうこともあるかもしれない。
「ところで、カトリーナ様、実は、少し言いにくいことなのですが……」
執事がこっそりとわたしに近づき、数字が一杯に記入された表を示した。
「これは???」
「本日の宴会の見積表でございます。要するに、この程度の費用は掛かりますので、キャッシュで御用意いただかないと……」
ひととおり見積表に目を通してみたら、とにかくすごい。メインディッシュのブラックスライムとトログロダイトのテールスープはタダだけど、その他諸々……具体的に言えば、前菜等の料理、BGM用の楽団、ツンドラ候に破壊されるであろう屋敷の修理費用等、合計すると、かなりの額になる。
「しょうがないわ。でも、値切れるところは値切るのよ」
現金は惜しいけど仕方がない。「許可がもらえれば、十分、元は取れる!」と、自分に言い聞かせて……
わたしは守銭奴ではないつもりだが、やはり現金が失われてしまうのは寂しいものだ。なんとなく悄然として、宮殿に向かう馬車の車窓から、外の風景に目をやっていると、
「まあまあ、マスター、一時的には出費だけど、投資として捉えればいいと思うよ」
「分かってるわ。将来的にリターンを生むと考えれば、どうというこはない……はずだけど、やっぱり現実の出費には抵抗感があるわね」
わたしの性格からすれば、「損切り」はできそうにない。相場には手を出さない方がよさそうだ。
ともあれ、しばらくして馬車は宮殿に到着。気持ちを切り替えて、「誘致活動」に努めなければ。
「ここからが勝負というか正念場というか…… でも、成算十分だから、あまり緊張感はないけどね」
わたしはプチドラを抱いて馬車を降り、帝国宰相を探しに宮殿内に。
ところが……
「あの爺さん、一体どこにいるのかしら?」
今回も、帝国宰相はなかなか見つからなかった。




