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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第5章 帝都の下水道網
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帝都の下水道網

 入り口からは、階段が地下へと続いていた。ガイウスは魔法で光の球を空中に浮かべ、

「ここから下水道だ。なんというかな……まあ、いろいろな意味で、気をつけて」

 わたしたちは一列になって、慎重に足元を確かめながら階段を下りた。それほど長い階段ではなく、地下1階に下りるくらい。その先では、レンガ造りの地下道が延々と続いていて、地下道の真ん中を比較的幅の広い排水溝が走っている。排水溝の水はどんよりとよどみ、流れはあるのかないのか分からないくらい、ゆっくりとしている。耐えがたい悪臭が鼻を突き、オエップ、吐き気が……


 ちなみに(後から調べてみて分かったことだが)、帝都の下水道の歴史は古く、都市が建設された当初から、生活排水や汚物を流すために設置されていた。排水用ポンプなどの便利な設備はなく、当然、重力による自然排水方式。帝都を貫く「北の大河」が下水道の出口となっている。

 下水道は、初期には数本の排水溝が地上を流れるだけだったものが、町並みが拡大するにつれ排水溝の数が増えていった。そのうちに地下への移設工事も行われ(出口に近いところでは地表に出ているが)、今では帝都の地下を下水道網が覆いつくしている。「帝都の地下に、もう一つの帝都がある」と言ってもいいくらい。下水道網は、いい加減な計画で無秩序に拡大されていったものだから、その全容は、帝国政府も把握していない。

 さらに、下水道には、事業に失敗して零落した商人や、借金取りに追われて行き場を失った自由民や、暴虐な主人から逃げてきた奴隷などが浮浪者として住みついたり、ブラックスライムやトログロダイトのほかにも、様々なモンスターの巣になっていたり(信憑性には大いに疑問があるが、超小型のクラーケン(のような生き物)を見たという者もいる)、混沌の勢力の秘密基地もしくはアジトが置かれたりしているので、冒険屋にとっては格好の「ダンジョン」となっている。莫大な金銀財宝が下水道網のどこかに隠されているという都市伝説もあり、ここを訪れる冒険屋は多い。


 魔法の光の球に照らされながら、もちろん、なんとも言い様のない悪臭に耐えながら、わたしたちは進んだ。途中には、白骨や錆びついたチェーンメイルが転がっている。山道ならぬ、「この下水道を行きし人あり」などと、シャレている場合ではない。

「もう少し進めば目的地だ。みんな、がんばれ」

 と、ガイウス。渋い顔をして鼻をつまんでいる。気持ちが悪いのは、みんな同じらしい。でも、「もう少し進めば目的地」ということは……

「ガイウス、あなたは帝都の下水道網に詳しいの?」

「ははは、職業柄ね。詳しくは話せないが、下水道網は、我々の活動に不可欠なんだ」

 ダーク・エルフの非合法活動は、どうやら文字どおりの地下活動らしい。帝都の下水道網を利用できれば、それは、「地の利」として働く。万事抜かりないダーク・エルフのこと、下水道網の全体図くらい作成していたりして……

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