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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第4章 総合商社営業許可
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人気者のツンドラ候

 ツンドラ候は額の汗をぬぐい、

「ウェルシー伯、この前は突然いなくなってしまったが、今日はまた、妙なところで会ったもんだな」

「ええ、このところ、急用で国に戻ったり、またまた帝都に出てきたりといろいろなことがありまして、挨拶に伺う余裕もなく、失礼いたしました」

 ニューバーグ男爵はせわしなく、ツンドラ候の背後を行ったり来たりしていたが、

「お話中のところ申し訳ございませんが、ツンドラ候、予定の時刻は過ぎているのですぞ」

「固いこと言うなよ。既に遅れているのだ。10分遅れようが、60分遅れようが、大した違いはないだろう」

 ツンドラ候は、一向に意に介さない。

「そうだ、ウェルシー伯、今日の夜は、いつものゲテモン屋に行こうぜ。このところ、いろんなところに呼ばれて、上品なものばかり食わされているからな。やはりゲテモンこそ最強!!!」

 予想していたとおり…… わたしの顔は蒼ざめ、プチドラはブルブルと震えた。

 しかし、ニューバーグ男爵が両腕で「×」印を作ってダメ出しし、

「いえ、ツンドラ候、今晩は既に予定が入っておりますぞ。ウェストゲート公の館で晩餐会です。ちなみに明日はアート公、その次はサムストック公、更にその次は……(以下、略)…… 早い話、この先1ヶ月ばかりは予定が詰まっているのですぞ」

「なっ、なに!? そんなに先までも!? ということは、この先1ヶ月はゲテモンを食えないのか?」

 ツンドラ候は力を失って、ヘナヘナとその場に崩れ落ちた。

「そうです。しかし、とにかく今は、もっと重要なことがあるはずで……」

 ニューバーグ男爵は、わたしに一礼すると、ツンドラ候の腕を引っ張って去っていった。


 わたしはプチドラと顔を見合わせ、ホッと一息、

「一瞬、どうなることかと思ったけど、助かったわ」

「そうだね。でも、毎日晩餐会なんて、ツンドラ候は人気者なんだね」

「そりゃ、そうでしょ。一応、あれでも派閥のボスなんだから……」

 帝国宰相に往時の勢いがなくなり、ドラゴニア候も領地に引きこもってしまったのだから、ツンドラ候としては、誰か適当な皇族を担いで皇帝に立てれば万事OK。普通なら、そうするだろう。でも、あの人は「単細胞」だから……

 ウェストゲート公とかアート公とかサムストック公とか、皇帝位の有資格者がどのくらいいるのかは知らないが、そういった連中はツンドラ候を利用しようとするだろう。晩餐会に招くのは、多分、そのためで、ツンドラ候を味方にして帝国宰相の追い落としを図り、のみならず、宰相失脚後をにらみ、「自分こそ次の皇帝にふさわしい」とのアピールも兼ねてという、一石二鳥の策。

 でも、もし、そうなら……

「プチドラ、気が変わったわ。一度だけ、帝国宰相を助けてあげましょう。ついでにツンドラ候も」

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