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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第4章 総合商社営業許可
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帝国宰相はいずこ

 次の日の午後、わたしは適当に高級な衣装をまとい、馬車で宮殿に向かった。前回は宮殿に入れてもらえなかったけど、今は皇帝暗殺から日数も経っている。まさか、今も「進入禁止」ということはないだろう。プチドラは、気持ちよさそうに、わたしの膝の上で寝そべっている。

 果して、宮殿の門の前では、衛兵が出入りをチェックするだけで、警備は普段のとおり。無事に宮殿に乗り入れることができた。

 プチドラは起き上がって、

「ここまでは予定どおりだね。でも、これからが問題かな」

「分かってるわ。もともと無理スジだから、うまくいかなければ、それはそれで、しょうがない」

 そもそも帝都に来た目的は総合商社の開業のために営業許可をもらうこと。そのためには、帝国宰相くらいの極めて強力なコネや、ワイロのための多額の資金が必要となる。通常なら、帝国宰相がわたしのために骨を折ってくれることは有り得ないだろう。でも、今ならば、状況が状況だけに、「宰相の味方になる」と言えば、営業許可くらいはくれるかもしれない。


 わたしは玄関先でプチドラを抱いて馬車を降り、宮殿内を適当に歩き回った。そのうちに帝国宰相に出会えるだろうという、非常に楽観的な見通しをもって。

 宮殿の床や天井の部材、廊下に並べられた調度品などは、当然のように、最高級品が惜しげもなく使用されていて、「ため息が出るくらいにスバラシイ」としか言い様がない。少しくらいなら、こっそりと無期限で拝借しても分からないだろう。

 すると、プチドラは、わたしの挙動不審に気付いたのか、

「マスター、あまり、そういった庶民的な…… 良い趣味と言えないようなことは……」

「もちろん実行に移そうとは思わないわ。頭の中で考えるだけなら犯罪じゃないでしょ」

 でも、帝国政府は宮殿を建てるために、「税金」と称して国民から資産を徴収(強奪)したはずだ。宮殿の備品が盗まれても、泥棒が盗品を盗まれるようなもので、文句を言えないのではないだろうか。

 それはそれとして、宮殿内を1時間ほど彷徨してみたが、帝国宰相の姿を目にすることはできなかった。顔を合わせたくない時にはよく会うのに、肝心な時にはどこにもいない。往々にして、よくあることだけど……


 やがて、長い廊下の向こうから、見慣れない(というか、初めて見る)3人組が、話をしながら、こちらに近づいてきた。誰かは知らないが、年齢的には40代から50代だろう、やや肥満気味。腹を突き出してふんぞり返って歩いている。いかにも「私はエライ」と言いたげな態度だ。

 すれ違う際、無用の争いを招かないよう、一応、最敬礼。でも、相手はわたしを完全に無視。実際、どれだけエライんだか。その時に「帝国宰相も、これでお終いだ」とか、「次の皇帝が問題だ」とか、話が漏れ聞こえてきたが、彼らは、ガイウスの言っていた、アート公、ウェストゲート公、サムストック公だろうか。

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