表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/96

形勢逆転

 わたしは作業着(しつこいようだけど、いつものメイド服)に着替え、伝説のエルブンボウを持って、本営に向かった。本営には、ひっきりなしに伝令係が出たり入ったりしている。いかにも戦争中といった雰囲気。わたしが本営に入ると、司令官は椅子を勧め、

「お待ちしておりました。さあ、ここにお掛けになってください」

「ありがとう」

 腰を下ろすと、朝食のパンと飲み物が運ばれた。わたしがパンをかじっていると、司令官は神妙な顔つきで、

「戦況は一進一退です。ただ、どちらかといえば、こちらがやや押され気味かと……」

 奇襲をかけて楽勝のつもりが、反対にこちらが奇襲を受けることになったのだから、押され気味なのは当然の成り行きだろう。一気に打ち破られなかっただけでも良しとしなければ。

「しょうがないわね。わたしも最前線に出るわ」

 わたしは伝説のエルブンボウを持って立ち上がった。

 司令官は、それほど驚いた風もなく、

「良い考えだと思いますが、危険ですよ」

「危険でも、このくらいの演出は必要でしょ。押され気味なら、なおさらのことよ」


 わたしは司令官に一番の激戦地に案内してもらった。木の柵が張り巡らされ、その向こうでは、猟犬隊員とオーク、ゴブリン、ホブゴブリンが血みどろの殺し合いを続けている。どうやら乱戦のようだ。これでは弓は使えない。味方に当たってしまう。

「う~ん、困ったな……」

 こんな場合、アーチャー(射手)では役に立たないし、わたしにはウォーリアー(武闘派の戦士)としての技量は無きに等しい。それでも、司令官は大声をあげ、

「ヤロウども! 今、ここに、カトリーナ様がおいでになっている!! ブザマな戦い方をするヤツは、バラバラにして、ブタのエサだぁ!!!」

 そして、どこから持ってきたのか、わたしにレイピア(細身の剣)を握らせ、

「ここはひとつ、ビシッと決めちゃってください。適当に大声を出せば、味方は奮い立ちますよ。」

 なんとも安直な感もしないではないが、わたしはレイピアを高くさし上げ、大きく息を吸い込み、

「今はただ、よく守れ。あと10分くらいすれば、隻眼の黒龍を中心とした航空戦隊が戻ってくるはず。その時が本当の勝負。打って出て、一気に敵を殲滅する」

 すると、呼応するように、味方から元気よく「オー」という声が上がった。信じられないことだが、うまくいったらしい。猟犬隊員の頭の中は単純にできてるのね……

 それから5分ほど後(兵士たちの前で適当に宣言した時間より早く)、隻眼の黒龍とマリアが戻ってきた。メアリーは魔法戦隊を連れているので、少々時間がかかるようだ。ともあれ、これで勝負はついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ