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夜が明けて

 空が白みだすと……

 ……コーケコッコーーー…… ……コーケコッコーーー……

 雄鶏のけたたましい声が響いた。御都合主義的に見えるかもしれないが、実は、これには合理的な理由がある。すなわち、生肉は腐りやすいので、兵糧として生きた雄鶏を連れてきているということ。更に、生きた雄鳥は目覚まし時計の代わりにもなり、何かと役に立つ。

「ふぁ~……」

 わたしは固いベッドの上で上体を起こした。作戦が予定どおりに進行しているなら、今頃は、メアリーたちが、カチューシャ・ロケットさながらに、敵陣に魔法攻撃を浴びせかけているはずだ。

 ところが……

「たっ、大変です!!」

 司令官が大慌てで駆け込んできた。わたしはギョッとして、思わず布団をかぶり、

「どうしたのよ、騒々しいわよ」

「そっ、それが…… 大変なんです。目の前に敵がいるんです」

「そりゃ、そうでしょ。敵軍と向かい合って対峙してるなら、当たり前じゃない?」

「いえ、そうではなくてですね、とにかく、こちらへ」


 強引に司令官に腕を引っ張られ、連れて行かれた先は、付近一帯が見渡せる高台だった。

「あれを見てください。大変でしょ」

 司令官は戦場を指差した。見ると、オーク、ゴブリン、ホブゴブリンの軍勢が大挙して、こちらの陣地に攻撃をかけてきている。ただし猟犬隊もよく防ぎ、今のところは、なんとか持ちこたえている。

「これは、一体、どういうこと?」

「正直なところ、私にもサッパリ分かりません。夜明けとともに、敵の攻撃が始まりまして、こちらとしては不意を討たれた格好です。それでもなんとか頑張って、耐えてはいますが……」

 夜明けとともに敵の攻撃が開始されたということは、敵は昨日の夜から今日の朝早くにかけて山を下り、こちらの陣の前に集結していたことになる。であれば、敵陣は既にもぬけのカラで、メアリーたちの攻撃は空振り、誰もいない陣に魔法を打ち込み、無駄に体力を使っただけということだ。どこかで見た作戦と同じような経過をたどっているようだが……

「カトリーナ様、いかがいたしましょう」

「『いかが』と言われたって、今は頑張って耐える以外ないでしょ。そのうち隻眼の黒龍も戻ってくるわ。それまで持ちこたえることができれば、うまい具合に敵を挟撃できるし」

「分かりました。全軍に『とにかく頑張れ』と伝えます。多分、大丈夫と思います。なんとかなります、ハイ」

 司令官は小走りに駆けていった。頼りないように見えるけど、本当に大丈夫だろうか。

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