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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第2章 商談と団体交渉
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嫌がらせの方法

 富国強兵で帝国の動乱に備えるつもりが、大幅に予定が狂ってしまった。騎士たちと呑気に法廷闘争をしている場合ではないが、相手がその気なら、受けて立たざるを得ないのが辛いところ。

「しょうがないね。既得権が絡んでるから、多分、相手も必死のところだよ」

 プチドラは、あまり関心がなさそうに執務室の机の上で寝そべっている。旧来の権利が侵害されたら黙ってられないのは分かるけど、それはいわゆる「立場の相違」というもの。わたしが騎士ならば彼らの味方だけど、そうでないから敵対するだけのこと。


 わたしは、ふと思い立って、ポット大臣のいる事務室に向かった。古今東西、「上役」と「下っ端」が対立した場合、「上役」がすること(なすべきこと)のパターンは、ほぼ決まっている。それは、どういうことかというと、

「ポット大臣、突然だけど、騎士団長を任命したいの。今は空席よね」

「はい。ゴールドマン前騎士団長が亡くなられて、そのままです。騎士団長を任命されるということは、慣例に従えば、騎士会執行委員長のレッドポール殿ということになりますが、そのようにいたしますか?」

「そんなわけないでしょ。どうして敵の頭目を騎士団長にしなければならないのよ」

「はあ?」

 ポット大臣は、なんだか分からないという顔をして口を開けた。


 わたしはポット大臣の襟首をつかまえ、

「騎士団長はメアリーかドーンで決まりよ。それ以外に適任者はいないわ」

「しっ、しかし…… それは余りにも、その、なんと言いますか……」

「どうして? まさか、わたしに騎士団長の任命権がないとでも?」

 ポット大臣は、額のあぶら汗をぬぐい、

「いえ、そうではないのです。確かに、おっしゃるとおり、騎士団長の任命権は、法的にはカトリーナ様にございます。しかし、その前提として、そもそも騎士団長というからには騎士でなければならないのですが、メアリー殿もドーン殿も、残念ながら、騎士ではございません」

「分かってるわ。でも、任命するのは『騎士団長』よ。『騎士』とは別概念と捉えれば、問題ないでしょ」

「それはしかし…… カトリーナ様に仕える『騎士』の長としての『騎士団長』を選ぶわけですから、そもそも『騎士団長』は概念的に『騎士』の概念に包含されていなければならないと言わざるを得ず、少々言いにくいのですが、ハッキリ申し上げますと、それはとても無理、そんなことを言うと笑われるような類のものかと……」

 無理スジなのは最初から分かっていたが、これだけハッキリとダメ出しされると、強引にねじ込むこともできない。

 ただ、そういうことならば、別の方法を考えるまでのことで、

「ポット大臣、騎士だったら問題ないのね」

「一応、法的には問題なしと言いますか…… 形式論理的には可能でございますが」

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