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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第2章 商談と団体交渉
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教育予算獲得のため

 隻眼の黒龍に乗って飛んで帰ったので、交渉には、時間的にギリギリのところで間に合った。館の中庭で子犬サイズに縮小したプチドラを抱いて、玄関に入ると、

「まあ、カトリーナさん! 今までどこへ? 騎士会の人たちは、もう到着しているわ。」

 わたしを探し回っていたのだろう、息を切らして走ってきたエレンが言った。

「いや、ちょっとそこまで……」

「え~っと、とにかく早く準備を。まず服を着替えて、それから……」

「このままでいいよ。どうせ、格下の騎士が相手だから」

「そんなわけにはいかないわ。相手は正装で来ているし。それに、視覚的に相手を威圧するためにも、ここはビシッと正装で決めないといけないわ」

 今着ているのは例によって、いつもの作業着(つまりメイド服)。正装に対しては正装で応じるのがマナーだから、一応、エレンの言うとおりだけど、なんだか面倒な……

 そのうち、エレンは待ちきれなくなったのか、

「時間がないから、早く」

 と、わたしの手を引っ張って寝室まで連れ込み、実に手際よく、メイド服から正装のドレスに着せ替えた。


 騎士たち(すなわち騎士会執行委員)は応接室で、今や遅しとわたしの登場を待っていた。わたしはエレンに導かれ、プチドラを抱いて応接室に向かう。なお、エレンも「技術的な説明」が必要な場合に備えて同席することになっている(ポット大臣は、「お気の毒に」というべきか、事務室で別の仕事)。

「交渉でギャフンと言わせてやらないとね」

 いつになくエレンは張り切っている。

「エレン、なんだか今日は…… 気合十分だね」

「だって、要求を退けて、その分、いくらかでも教育予算に回してもらえれば……」

 なるほど、教育予算獲得に執念を燃やす女なのね。

 エレンが応接室のドアを開けると、騎士たちは一斉に立ち上がった。わたしが部屋に入ると、騎士たちは恭しく一礼し、わたしがソファに腰掛けると、ワンテンポ遅れて腰を下ろした。この辺りの一連の動作は儀式的なものとして定型化されているのだろう。

「本日は、このような交渉の場を設けていただき、ありがとうございました」

 最初に口を開いたのは、館に戻ってきたときに廊下で鉢合わせになった、あの鎧武者だった。

「では、まず、我々の自己紹介から。私が騎士会執行委員長を務めさせていただいておりますアーサー・クリス・バーナード・レッドポール、こちらにおりますのが副委員長ボブ・エドモンド・ザ・スレイヤー・アイアンハート、そしてこちらが書記長リチャード・ハル・ジェイコブ・スポンサー、そしてこちらが……」

 執行委員長によるメンバー紹介が続く。相手の人数は10名程度。一度に紹介されても覚えられるはずがないが、それはともかく、「執行委員長」とか「副委員長」とか「書記長」とか、肩書きとして付けられた言葉の響きが醸し出す雰囲気は、いかにも……といった感じ。

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