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ザ☆旅行記Ⅵ ウェルシーにおける動乱記  作者: 小宮登志子
第2章 商談と団体交渉
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余りに日常的な

 ミスティアからミーの町の館に戻って1週間程度、大した事件もなく、平穏に過ぎた。基本的な日常としては、朝9時前にプチドラに起こされて目が覚め、寝ぼけ眼をこすりながら、ベッドで上半身だけ起こし、ぼんやりとしていると、慣例的にエレンが朝食を持ってきてくれる。

 この日もいつものように、エレンが朝食の載ったお盆を持って、

「おはよう、カトリーナさん。眠そうね。昨日も夜更かし?」

「……お……は……よう…… 眠い……」

 わたしは後ろに倒れこみ、もう一度布団をかぶろうとした。

 すると、エレンは布団を引っ張り、

「ダメよ、しっかりしないと。今日は交渉の日でしょ」

「……交渉? あっ、そうか」

 忘れていたけど、今日は騎士会の要求書に係る交渉の日。騎士会執行委員が団体で館に出向いてくるらしい。交渉の日程を聞かされたのは3日前で、それまでエレンが日程調整を行っていたとか。

「交渉か、なんだか面倒だわ。ねえ、エレン、あなたに一任するから、わたしは出ないという……」

「それはダメよ。交渉で重要なことは、話し合いの内容じゃなくて、誰が出てくるかだから」

 エレンはさえぎるように言った。確かに正論、そのとおりなんだけど……


 遅い朝食を食べると、わたしはプチドラを抱いて中庭に出た。交渉は午後からだから、時間は十分ある。騎士会の要求に対しては、とりあえずゼロ回答のつもり。事前に想定問答集で受け答えの練習をすることもない。

 わたしは中庭を横切り、門を出た。門の前では、若い猟犬隊員が二人、黒いユニフォームをビシッと決めて立ち番している。

 プチドラは、わたし腕の中からわたしの顔を見上げ、

「マスター、あまり遠くに行くと危ないよ」

「分かってるわ」

 もともとそんなに物覚えが良い方ではないが、致命的な方向音痴という自分の欠点くらい忘れはしない。だから、「今日は遠くに行かず、館の周囲を……」のつもりで、そのまましばらく歩き続け、大通り(のようなところ)に出た。

「あれ?」

「どうしたの? ひょっとして、マスター、今日もまた……」

 プチドラは、「やっぱり」という顔で、わたしに冷ややかな視線を送った。

「なんでもないわ」

 と、言いつつ、わたしは既に道に迷っていた。そのまましばらくフラフラとあちこち歩き回ったが、結局、

「プチドラ、お願い」

「あらら…… やっぱり迷ってたのね」

 交渉に遅れるわけにはいかないので、プチドラには隻眼の黒龍モードに戻ってもらって、緊急避難的に、空から館に戻ることに……

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