G&Pブラザーズの受付
次の日、わたしは隻眼の黒龍に乗って、メアリーとともに、空路、ミスティアに向かった。直接、G&Pブラザーズ本部前に降りる予定。
メアリーは怪訝な顔で、
「カトリーナ様、ドラゴンが街中に降り立つとすれば、場合によっては、いえ、十中八九は混乱が予想されますが……」
「構わないわ。騒ぎを起こしたとかで怒られても、謝ってしまえば、それでお終いよ」
そういえば、前回は確かカオス・スペシャル絡み、早い話、G&Pブラザーズへの殴り込みだった。隻眼の黒龍が本部前に降りると、住民は肝をつぶしてどこかへ隠れてしまった。
果して、今回も同じようなもので、住民は隻眼の黒龍を見ると驚いて家の中に隠れるか、とりあえず逃げるかだった。その際には、おそらく、道で転んだり階段で足を滑らせたりして、ケガ人が多数出ているだろう。
隻眼の黒龍は悠然とG&Pブラザーズ本部前に降り立つ。
わたしはその背中から本部を見上げ、
「組織は大きくなっていると聞いたけど、その割に、本部は全然変わってないのね」
「忙しくて建物を気にかける余裕がないのかもしれません。本部に立派な建物を建てようとするのは、腐敗あるいは衰退の兆しということもあります」
と、メアリー。なるほど、そういうものかもしれない。立派な庁舎でも中身が伴わないのはよくある話だから。
わたしが隻眼の黒龍の背中から降りると、隻眼の黒龍は体を縮め、子犬サイズのプチドラとなって、ちょこんとジャンプ、わたしの腕の中に納まった。
そして、プチドラは腕の中から、わたしを見上げ、
「マスター、これからどうするの? 普通に社長に面会を申し込んでも断られると思うよ」
「今までみたいに、ひと暴れしましょ。毎度同じパターンは気が引けるけど、手っ取り早いわ」
「今回もですか。ご命令ならば仕方がありませんが……」
メアリーはつぶやくように言った。あまり乗り気ではなさそうだ。本当に平和主義者なのだろう。
ともあれ、わたしは入り口のドアを開け、受付で一言、「社長に会わせろ」。
すると、受付にいた筋骨たくましい若手ギルド員は、無理矢理笑顔を作りながら、
「面会のお約束はありますでございますか?」
非常にぎこちないけど、一応、丁寧に応対しているつもりなのだろう。G&Pブラザーズは合法的な商売も始めたということなので、暴力的なイメージの一掃に努めているのかもしれない。
「約束なんかないわ。とにかく、今すぐ会いたいのよ。いるなら出しなさいよ」
若手ギルド員は、一瞬、眉間にしわを寄せ、鋭い眼光でわたしをにらみつけた。しかし、すぐに笑顔を作り直し(おそらく、怒鳴りたくなるのを抑えて)、のどから声をしぼり出すように、
「そっ、それでしたら、申し訳ございませんが、今すぐはダメで、この面会申込書に……」
わたしは最後まで聞いていなかった。プチドラを促し、いきなり火炎放射で若いギルド員を火だるまに……




