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エピローグ:そして、旅の始まり

 ソルディスが目を覚ますと、馬車はいつのまにか動いていた。

 どのぐらいの距離を進んだのだろう。ほろのついた馬車では周りを見ることができない。

 御者台の方からは兄二人の声が聞こえる。踊り子たちの猛攻に辟易としているサイラスが馬車の中からクラウスと話しているらしい。時々、その声に笑いが混じっている。

 暖かさに顔を下に向けると自分の腕にしがみつくようにしてシェリルファーナが寝息を立てていた。

(こういうぬくもりは・・・初めてだな)

 父に自分が不義の子であると思われてから・・・生まれたその瞬間から彼はずっと家族と触れ合うことができなかった。

 母はいつも父の傍にいることを義務付けられ、傍を離れるときは4人以上の侍従に囲まれ、その行動を制限された。

 自分と同様に父に疑われていたサイラスは寵愛という虚偽の状態のもと、四六時中監視され続けていた。

 クラウスは比較的頻繁に自分のもとに来てくれたが、剣の修行にでるようになると城の中にいること事態が少なくなった。

 シェリルファーナはいつも母と一緒にいるために自分に母と同様に自分に近づくことはできなかった。

 幼かった頃のソルディスの周りには機械のような侍従・侍女か自分の命を狙う刺客・・・自分に過大な期待を押し付ける神官しかいなかった。

 抱きしめてくれる・・・抱きついてくる、腕。

 その優しさ、暖かさ・・・それは春の日差しに包まれているかのように気持ちを解してくれる。

「起きたのか?」

 鬘だけとっただけのサイラスが薄目を開けていたソルディスに声をかけた。

「もう少し、寝ていていいよ」

 サイラスは器用に弟と妹の頭を自分の足の上に乗せると、その髪の毛を優しく撫でてくれる。

 初めて与えられる心地よい一時に、ソルディスはまだ重い瞼をゆっくりと閉じた。

この話の中で一番穏やかな部分かもしれません。

ソルディスにとり、守るべきものはこういう暖かい『何』かなのかもしれません。

そして、この話もとりあえず此処で一端終了します。

ご読了、ありがとうございました。


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