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第二十四話:光姫の嘆き

 アントワーヌに連れられて王の間についたアーシアだったが、兄の姿は王の間にはなかった。

 この部屋で待つようにと申し付けられた彼女はそこに王子たちの痕跡や、彼らを救うための手立てがないか探り始めた。

(大きな、姿見・・・)

豪華ではあるがどこかこの部屋に似つかわしくないそれは、何かの抜け穴かもしれない。暖炉の中に転がる生首は誰の物なのだろうか。そしてバルガス王の肖像を切ったのは・・・。

 外は相変わらず騒がしく、所々で大きな炎が上がっている。

 精霊達が騒いでいるのは魔法を使って戦いが行われているせいなのだろう。炎の精霊と夜を支配する闇の精霊の力が先ほどから増している。

(兄様が、戦っている?)

 こんなに強い闇の精霊を呼べるのは、今のところ兄・ウィルフレッドだけだ。そして炎の精霊を呼べるのは・・・

(兄様がルアンリルと戦っている?)

 従兄弟同士の戦いがこの城のどこかで行われている。

 自分達きょうだい以外で自分たちに近いところにいたルアンリルはアーシアが捕まった以降、何とか彼女を助け出すための努力をしてくれた人だ。そのせいで精霊族と王との確執が深まったとも言われている。

 そんなルアンリルと兄がどうして戦っているのだろうか。

 考えている間に、ふぅっと精霊の力が弱まった。

 いや、弱くなったのは炎の精霊のみ・・・闇の精霊は未だ強い力を放っている。

 それが意味することにアーシアは恐怖した。

 彼女は近くの椅子に腰をかけると、震える手を胸に抱きしめた。

 いったい何が起きているのだろう。あの優しい王子は無事にいるのだろうか。

 ぎゅっと目を閉じて、悪い考えを追い出そうとしてみるのだが、どうしてもいやな考えのみが頭を支配してゆく。

 暫くそうしていると騒がしい足音がこちらに近づいてきた。顔を上げるとルアンリルを胸に抱えたウィルフレッドと、何とか弁明を謀ろうとするオーランド卿の姿が視界に入った。

 王の間の入り口に控えていたアントワーヌが一礼をすると、ウィルフレッドは胸に抱えていたルアンリルを彼女の前に横たえる。

「治癒魔法はかけてある。出来る範囲で手当てをして魔術師専用の牢に入れておけ」

 アントワーヌは短く「はい」と答えると隣室で震えていた侍従二人に担架の準備をさせる。

「殺さなくて、よいのですか?」

 ウィルフレッドの決断に驚いているオーランド卿は思わず、そう主に尋ねてしまった。その質問にウィルフレッドは先ほどよりももっと冷たい視線を彼に送る。

「ルアンリル=フィーナは間違いなく、王子たちが城を脱出するまで同行していたはずだ。そして無事を確認してから役目のためにこちらに来たと考えられる」

「はぁ・・・」

 それでもその生かしておくことの重要性が判らない彼に、アントワーヌは溜息をつき、アーシアはそんな人物を配している兄に冷たい視線を送る。

「つまり、あなたは、ご自分の従妹弟に尋問をされるのですね」

 冷ややかな言葉を発したアーシアにウィルフレッドは何を判りきった事をとでも言いたげに笑う。

 急に言葉を発せられて、初めて彼女の存在に気づいたオーランドはその少女の美しさに息を飲んだ。

 抜きん出た美しさを誇るバルガス王妃を筆頭に王の愛妾の容姿の美しさは有名ではあったが、この少女の美しさは並では語れないほど圧倒的であった。

 たゆたう様に流れ落ちる黄金の髪、木漏れ日を集めたような美しく明るい緑の瞳、目鼻立ちはしっかりとしているが、きつさは一片たりとも感じさせない。

 この美しさならウィルフレッドも篭絡されるのではと思い、主人の顔を見てみると彼は苦虫を噛み潰したような顔をして彼女を見ていた。

「お前が、口を出すことではない」

「兄様が世のことわりに反するようなことをしているのであれば、進言し止めるのが兄弟としての役目です」

 歯切れの悪い兄の言葉にアーシアの怒りは更に増した。

 何よりも自分が王と決めた王子に対して兄が何をしようとしているのかを考えるだけで許しがたい。

 しかしウィルフレッドはアーシアの怒りに取り合おうとはしなかった。

「世のことわりなどバルガスが王に就いた時点で消えている」

と、冷たく言い放ちアントワーヌに早くルアンリルを牢へ連れて行くように指示をする。

 彼女も心得ているのか持ってきた担架へと慎重に聖長の身体を乗せると最敬礼をして王の間を辞した。

「王位継承の証を何一つ持たない王に比べれば、兄弟で分け合っているとはいえ二つとも揃っている我らが継ぐほうが理にかなっているだろう」

 兄の言葉が信じられなかった。誰よりも世の中のことわりを重んじていたはずの彼にいったい何があったのだろうかと訝しんでしまう。

「我々みたいに欠けている者よりももっと正統な者がおりましょう」

 暗にソルディス王子の存在を匂わせて言うと、彼は含んだ笑みで静かに首を振る。

 その意味が読み取れずにいると、ウィルフレッドはそこで会話を打ち切り踵を返して部屋を出て行ってしまった。変わりに控えの間から数人の侍女が来て、適当な部屋へと案内するといわれた。

 アーシアは怒りと悲しみをどこに持っていけばいいのかわからないまま、とりあえず侍女に従い部屋を移動したのだった。

今度は、アーシアvsウィルフレッドの兄弟喧嘩です。

前回の話より前にこの話を書きかけたのですが、途中で時間経過の関係上、この話が後になると判明し、こちらが第24部となりました。


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