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第九話 嵐の前の静けさ

 玉座から離れたソルディスは先程見つけたルミエール達に向かって近づいていった。

「ソルディス王子、おめでとうございます」

「本当におめでとうございます」

 通り過ぎるたびにかけられる祝いの言葉に適当に笑顔で答えながら、目的の人物へと声をかける。

「ヘンリー王子、ルミエール姫、レティア姫」

 ソルディスの声に一つのテラスを借り切っていた3人は笑顔で応えた。

「ソルディス王子、ご挨拶はおすみになりましたの?」

 ルミエールの言葉に、まさか途中でうち切ってきたとは言えず、取り敢えず、笑顔でごまかした。

 それを察知した3人は先程まで彼がいたパーティ会場の中央に位置する玉座へと顔を向ける。そこにはソルディスがいなくなって更に羽目を外した、バルガスが下品な笑いを浮かべながら隣国の使者に何かを言っていた。

 サイラスは少し非難めいた視線を向けているが、王はそれにも気付いていないようだった。

 こんな状態であそこに帰れとは言えない3人をソルディスは中庭へと誘う。

 少し喧騒から離れたそこには小さな噴水があり、休憩にちょうどいいベンチがいくつか置かれていた。

「「「ソルディス殿下、改めておめでとうございます」」」

 声を合わせて祝いの言葉を言ってくれた3人に、ソルディスは目を細める。

 眩しく温かい光のような彼らの態度は、ソルディスの心をも明るく照らしてくれる。

「ありがとうございます」

 ソルディスは3人の手を取ると心の底から感謝の意を述べた。




 ルアンリルは広い会場の中をソルディスを探しながら歩いていた。

 テラスにはいろいろな有力貴族や、隣国の大使がおり彼らはそんな彼女を不思議そうな顔でのぞき見ている。

「どこに、行かれたのだろう」

 先程自分の従兄であるウィルフレッドの挨拶の後、ソルディス王子が玉座から離れるのを確認した。

 自分が治める精霊族の副族長の件で最高神官長との話の最中でなければ彼の後をすぐに追いかけていたのだが、わずか数分の間に王子は別の場所へと移動したらしい。

(相談したい事があったのだが・・・)

 バルガス王から自分宛に奇妙な伝言が届いていた。

 それについて何かしらの相談と忠告をしたかったのだが・・・時は、刻々と過ぎ、伝言された時刻までに時間はない。

「ルフィーナ?」

従兄上あにうえ?」

 珍しい愛称で呼ばれて、彼女は顔をあげた。

 そこには温厚な従兄のウィルフレッドの顔があった。王族独特の整った顔立ちに闇を映す黒い髪と新緑の輝きの薄い緑色の瞳────学業は勿論、魔術にも剣術にも秀でる自分の従兄。精霊族と王族のハーフでなければ・・・いや、王位継承の証である『光なす黄金』をもっていたなら彼はソルディスよりも先に王になっていたはずだった。

 だが彼はそんな事をおくびにも出さずに、いろんな貴族とつきあっている。

 バルガスが彼を嫌うのは『王位継承を持たない』という同じ立場でありながら、自分と彼との間にある信頼の差のせいだろう。

「ソルディス王子を知りませんか?」

 ルアンリルの問いに、彼は玉座の方を見た。

 王子がいないのを確認すると、少し考えたようにしてから

「それでは、先程中庭で見かけられたのは、王子だったか・・・ロシキスの王子たちと一緒にいたように思う」

 ウィルフレッドの言葉に、ルアンリルはぱあっと顔を明るくさせた。

「ありがとうございます。従兄上」

 挨拶もそこそこに去っていく従弟妹にウィルフレッドは、小さく苦笑する。

「その心が今日が終わるまで持つかな・・・?」

 小さな小さな呟きは、パーティのざわめきの中、誰にも聞き取られる事はなかった。

色々と登場人物達が裏で画策しています。

ちょうど王都脱出編のの半分ぐらいが終わったと思います。

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