Episode 1 The Prologue
―やっとこの日がやってきた。
「長いこと待ったなあ~。……にひひ。」
目前の空で光る大きな星を見て頬がゆるむ。
込み上げてくる衝動にニヤニヤさせられた。
これから俺は幼なじみのクラウスと一緒に旅をする。
金を稼ぎながら力をつけて、同じ想いを持った仲間を探すんだ!
これまでずっと、ウズウズする体を必死に押さえて、バルワースの終戦記念日(かつての革命家バルワースの処刑日)まで待ち続けてきた。
まあ、母ちゃんが言うんだから仕方ねえけどな。
とにかく!法の門をくぐる覚悟はとうにできたんだ。
俺は世界に音楽を取り戻す・・・!
「いよいよだという時にこんなとこで一服か?」
突然現れたクラウスはこの煙草の甘ったるい匂いを察知したのだろう、そう聞いてきた。
「へへっ……なんかすっげえワクワクすんだ。」
思い返せば金を稼ぐためにたくさん働いたし、腕を上げるためにたくさん練習してきた。
来る日も来る日もクラウスと盗んだ酒を片手に、夢見た今日のことやその先のことを話あってきたなあ。
小さい頃から卑屈だった俺がこうして夢を持てたのはジールのおかげで、それを引っ張ってきてくれたのはクラウスだ。
心の底から感謝だな。
俺は今夜旅立つ。
この土地にはいつ帰れっかな。
村の人はみんな応援してくれたけど、ばあちゃんだけは違った。
生きてた頃は眉間にシワ寄せながら全力で止めようとしてたっけ。
―運命に揶揄されるがままなりと。
なんとなく説得力があってビビったけど意味分からねえし、まぁいいか!
ずっと前から心は決まってんだ。
俺はポケットからリングのピアスを取り出して双方の耳にぶらさげる。
「うっし行くぞ、クラウス!!」
2人乗り用のリムリグに乗せた機材や楽器を見つめて俺たちは腕を交差させた。
俺たちは"山林の聖地"と謳われる隣街クレスモアを目指した。
かつての世界的大バンド『レディクト』の記念石碑にあいさつでもしようと思う。
お祈りなんて柄じゃないから酒でも置いとこっと。
まだ規制のゆるいクレスモアなら酒場で演奏させてくれるだろうし、あわよくば仲間が見つかるかもしれない!!
そんな願いを胸に、クラウスにリムリグを飛ばさせる。
その日は道の途中にある、"日没の集落"サンセットサークルで宿泊することにした。
大きな盆地に造られた集落は涼しくて過ごしやすい。
サンセットサークルに着くと、門を見張っていた村人たちが円を作って囲んできた。
「て、てめえら、ここに何の用だ。早く立ち去れ!」
「え、なんでだよおっさ~ん!」
「俺たちはサムラの村から来た者です。一晩宿をお借りしたい。」
村人たちがざわつく…。
「そういう手にはもう乗らねえ。わかったら帰れ!」
するとクラウスはしばらく黙りこんだ後、何かを取り出した。
「俺はサムラ村長の息子だ。これを見ればお分かりだろう。」
長人の証が鈍く光る。
これは俺たちが旅に出るときにクラウスの父ちゃんがくれたものだった。
「おそらくあなた方は最近耳にする盗賊団に襲われているのでは?」
再び村人がざわつく…。
しばらくして村人たちは何かを察知したかのように静まり返った。
後方から1人の若い女が前に出てきた。
「お騒がせしまして申し訳ありません。私はサンセットサークルその長人の証を少し貸してお見せいただけないでしょうか?本物かどうか確かめたいのです。」
ぎこちない話し方だ。
戸惑うクラウスは俺に合図をする。
「ええ。もちろんです。」
ニヤリと笑うその女を背に、村人に扮していた盗賊が襲い掛かってきた。
「クラウス!気を付けろ!」
「人は毎日、同じラインに立っている。
夢がある人。富を築く人。地位を獲る人。
―愛す人愛される人。
そんな誰もが残りの人生の最初の日を生きていて、
そんな誰もが残りの人生に想いを馳せている。」
こういった言葉があります。
人にはそれぞれの事情がありますが、どの人だって毎日同じスタート地点にいるのです。
私自身、哲学的なところがあるのでモロに作品にでてきてしまうかもしれませんが、温かく見守って頂けると嬉しい限りです。
さて、登場人物を人間くさく、また、熱い想いを持った人間に描きたかったのですがプロローグでは見どころもあまりなく、表現しづらかったです。
人物像は少しは見えたでしょうかね!
読んでくれる皆様に何かを感じていただける作品にしていきたいと思っております(^ω^)!
よかったらこれからもよろしくおねがいします!
がんばりますわあああああああーい☆