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第1話 追放理由はまさかの喘ぎ声



「お前ら、今日限りで俺のパーティーを抜けてもらう! これ以上、俺たちの風紀と精神を乱されてたまるか!」


昼下がりの冒険者ギルド。

大勢の冒険者たちが酒を飲み交わし、クエストの報告で賑わうはずのその場所は、現在、異常なほどの静寂と……そして、異様な熱気に包まれていた。


静寂の中心に立っているのは、この街で今最も勢いがあると言われている新進気鋭の勇者ガイル。

そして、彼から冷酷な追放宣告を受けている三人の美しい少女たちだった。


「ま、待ってください! 私たちが一体、何を……っ、ふぁっ、んんっ……!」


悲痛な声を上げたのは、パーティーの壁役である重戦士のセリアだった。

彼女は巨大な盾を背負い、身の丈に合わないほど分厚い装甲に身を包んだ、真面目で質実剛健な少女だ。


だが、彼女が身を乗り出して必死に弁明しようとするたび、その豊満な胸が甲冑の中で大きく揺れ、同時に甘ったるい吐息がギルド中に撒き散らされた。


「私、前衛として……っ、い、いっつも……っ、がんばって、盾に……っ、んっ、はぁっ、あぁっ!」


必死に言葉を紡ごうとすればするほど、彼女の呼吸は荒くなる。

それは激しい戦闘による疲労でも、深い悲しみによる嗚咽でもなく、どう聞いても絶頂の一歩手前で快感に喘ぐ女のそれにしか聞こえなかった。


「だ、黙れ! お前が敵の攻撃を受けるたびに『くっ、もっと……っ、もっと奥まで来なさい……っ!』とか変な声で言うせいで、ゴブリンどもまで顔を赤らめて逃げていくんだよ! 俺たちがどれだけ恥ずかしい思いをしてるか分かるか!」


ガイルが顔を真っ赤にして怒鳴りつける。

彼の指摘通り、ギルド内にいる他の屈強な冒険者たちは皆、セリアの艶めかしい声を聞いて一様に顔を赤らめ、ある者は下半身をテーブルで隠し、ある者は天を仰いで荒い鼻息を吐いていた。


「そ、そんな……っ、はぁっ、ふぅっ……、私の、私の魔法は……っ、んんっ、あぁっ、んあっ!」


セリアの隣で、細い体を震わせながら杖を握りしめているのは、天才的な魔力操作を誇る魔導師のルミナだった。

彼女は恐怖と悲しみでただ泣きじゃくっているだけだ。

だが、その小さな唇から漏れるのは、嗚咽ではなく、ひどく艶めかしい嬌声だった。


彼女が泣くたびに周囲の魔力が共鳴し、彼女の吐息を甘く震わせる。


「お前の魔法も最悪だ! 詠唱が長くなるにつれて『で、出る……っ、出ちゃうぅっ!』って絶叫するから、後ろで聞いてる俺たちの集中力が完全に途切れるんだよ! 魔法を撃つたびにビクンビクン跳ねるな!」


「だ、だって……っ、魔力が、体に……っ、満ちて、あふれちゃうから……っ、ひぅっ、あはぁっ!」


ルミナが弁解しようと顔を上げるが、涙で潤んだ瞳と、熱を帯びて上気した頬はどう見ても「事後」のそれにしか見えない。

ギルドのカウンターの奥で、ベテランのギルドマスターまでもが鼻血を押さえてしゃがみ込んでしまった。


「勇者様ぁ……っ、ひぐっ、んっ、やぁっ、あぁんっ! 私の、回復魔法が、だめ、だったんですかぁ……っ、はふっ、あはぁっ!」


最後に泣き崩れたのは、純白の法衣に身を包んだ聖女フィリアだった。

彼女の清らかな涙とは裏腹に、発せられる声はあまりにも淫靡だった。

慈愛に満ちた聖なる力が漏れ出すたびに、彼女の喉の奥から、甘く痺れるような粘着質な水音が響く。


「お前が一番タチが悪い! ヒールをかけるたびに『あっ、あぁっ、あたたかいのが、入ってくるぅ……っ!』って泣き叫ぶな! 治療されてるこっちが変な扉を開きそうになるんだよ!」


「そ、そんなつもりじゃ……っ、ないのにぃ……っ、んんっ、いやぁっ、見捨てないでぇ……っ!」


フィリアがすがりつこうと手を伸ばすが、ガイルは汚いものを見るような目でそれを振り払った。


「とにかく、お前らみたいな『歩く公然わいせつ』とこれ以上一緒にいられるか! 俺はもっと、普通に戦える、普通の声を出せるまともな奴らと組む! 二度と俺の前にそのエロい顔を見せるな!」


吐き捨てるようにそう言い残し、ガイルは新しい仲間らしき者たちを引き連れて、足早にギルドを去っていった。


残された三人の少女たちは、ギルドの冷たい床にへたり込み、抱き合って泣き始めた。


「うぅ……っ、はぁっ、あぁっ……私、真面目にやってるのにぃ……っ、んんっ!」

「ひぅっ、ふぁっ……これから、どうすれば……っ、やぁっ、あはぁっ!」

「神様ぁ……っ、んっ、あっ、あぁぁんっ……!」


三人が絶望の淵で悲嘆に暮れるたび、ギルド内にはこの世の極楽かと思えるほどの極上な喘ぎ声のハーモニーが響き渡る。

周囲の冒険者たちは、同情したい気持ちと、下半身の猛烈な昂ぶりの間で激しい葛藤に苛まれ、誰一人として彼女たちに声をかけようとはしなかった。


ただ一人を除いて。


俺は酒場の隅で、安物のエールを傾けながら、その異常な光景を冷静に観察していた。

俺の職業は『付与術師エンチャンター』。

戦闘能力は皆無だが、魔力の波長を視覚化し、事象の構造を解析する独自のスキルを持っている。


ギルドの連中も、あの馬鹿な勇者も、誰一人として気がついていない。

俺の目にははっきりと見えていた。


彼女たちの吐息に合わせて、ギルド中の大気中の魔力が、まるで呼吸をするかのように美しく収縮と膨張を繰り返しているのが。


彼女たちは、決してふざけているわけではない。

むしろ、あまりにも真面目で、あまりにも有能すぎるのだ。


彼女たちの魔力器官は、常人の何百倍も敏感で、かつ精密にできている。

そのため、感情が高ぶったり、強力な技を使おうとしたりすると、無意識のうちに周囲の魔力を急激に吸い込み、限界まで圧縮してから放出してしまう。


その「魔力の過剰摂取と解放」のプロセスが、彼女たちの声帯を異常なまでに震わせ、結果として、周囲の男たちの理性を消し飛ばすような極上の「喘ぎ声」に変換されてしまっているだけなのだ。


つまり、彼女たちのあの声は、ただのいかがわしい鳴き声ではない。

『超高密度の魔力操作を行っている証明』なのだ。


勇者ガイルは、あの声のせいで彼女たちの本質を見誤った。

彼女たちが放つ規格外の魔法の威力にも、鉄壁の防御力にも、完全な治癒力にも気づかず、ただ表面的な「風評被害」だけを恐れて、この世界最高の原石たちを手放したのだ。


「……信じられない馬鹿だな。あいつ」


俺は空になったジョッキをテーブルに置き、ゆっくりと立ち上がった。


床に崩れ落ち、ただひたすらに泣き(喘ぎ)続けている三人の少女。

彼女たちの周囲には、あまりの艶やかさに当てられて白目を剥いて倒れている冒険者すら出始めている。

このままでは、彼女たちは「ギルドの風紀を乱した」という理不尽な理由で、この街からも追放されかねない。


俺は周囲の異様な空気を全く意に介さず、三人の元へと歩み寄った。


「ひぅっ……っ、んんっ……だ、だれ……っ?」


涙で顔をぐしゃぐしゃにしたルミナが、ビクッと肩を揺らして俺を見上げる。

その潤んだ瞳は、子犬のように怯えきっていた。


「見せ物じゃないわ……っ、はぁっ、んっ、あっちに行って……っ!」


セリアが警戒心を露わにして、ルミナとフィリアを庇うように前に出る。

だが、その強がりな言葉すらも、火照った吐息にまみれて「もっと私を見て」という誘惑にしか聞こえない。


俺は彼女たちの警戒を解くように、両手を軽く挙げて見せた。


「安心しろ、君たちのその声に欲情して近づいたわけじゃない」


俺はまっすぐに三人の目を見つめて、静かに、だがはっきりと告げた。


「俺には聞こえるんだ。君たちのその声の裏にある、誰よりも真面目で、圧倒的に美しい『本当の力』が」


三人の少女が、ピタリと動きを止める。


「君たち、俺と組まないか?」


それが、最強の変態……いや、最強の有能パーティーが誕生した、歴史的な瞬間だった。

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