音痴聖女
聖女マリーは全身から汗を吹き出していた。
ここはお城の大広間。たくさんの身分の高い人が集まっていた。
今日はお祝いの席で、王都の聖女たちが集められ、聖歌を歌ったのだ。
無事に聖なる歌を歌い終わったのだが、玉座の若き王はなにやら難しい顔をしている。
「ふむ、何か変だぞ」
王様は、わざわざ玉座から降り、聖女たちの前までやってきた。
横一列に並んでいた聖女たちは慌てて頭を垂れる。
「王様。どうかなさいましたか?何か不手際でも?」
同行していた司祭が青い顔をして王に問う。
「お前たち、今一度、歌ってみろ」
聖女たちはとまどいながらもう一度聖歌を歌う。
やがて、王は一人の聖女の前に立ち止まった。
「歌うのをやめよ。お前、お前だけ歌ってみろ」
王に指摘されたのはマリーだった。大勢の人に注目されて、マリーは緊張から足が震える。
「どうした、早く歌わないか!これは王命であるぞ!」
若き王の威圧に押されて、マリーは小さな声で聖歌を歌い始める。
「もっと大きな声で歌え!」
マリーは泣きそうになりながら歌った。
マリーは歌が苦手だった。ちゃんと歌おうとしても音程は外れ、声がひっくり返る。
若き王はその歌を聞いて笑った。他の貴族たちも王に合わせるように笑い出し、マリーは泣きながら歌った。
「なんて歌の下手な聖女だ。お前などこの王都にいる資格などない。どこぞの辺境の地でも行ってしまえ」
可哀想なマリー。
幼い頃、聖女の力に目覚め、家族とも引き離され、教会で聖女として、早朝から深夜まで聖女としてこの国に仕えてきたのにこの仕打ち。
意地悪な王様に辺境の地へ追放されてしまったのだった。




