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エピローグ
少年は山道を登っていく。
以前とは違い、冷たい風が服の間に入り込み、かすかに白い息が口から出る。
目的の場所に着いても、前のように息を整える必要はなくなっていた。
辺りを見回してみると、前と同じ苔が生えたベンチ。そして景色は緑から山吹色に変わっていた。
「おねーちゃん?」
返事はかえってこない。
「おねーちゃん!おねーちゃんっ!」
大きな声で何度呼んでも、結果は変わらない。
「…璃愛おねーちゃん?」
ベンチの傍に一凛だけ咲いているピンクのガーベラが、風に揺られていた。