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27話【妄言綺語】


 ドンドは未だ砂漠の三階層にいた。


 どうしても重量級であるドンドは何度か砂に足をとられ、進みが遅くなってしまったのである。


 しかしその一方で、サンドウォームに苦戦することはほぼ無くなっていた。


 その理由は、ニルの戦い方にあった。



「あ、また出てきましたね。ドンドお兄さん、すみませんが少し離れてください」


 ニルはそう言ってツインテールをふわりとなびかせながら前に出ると、


 腰のホルスターから掌サイズの黄色い小さな筒を引き抜き、それをサンドウォームの群れへと向ける。


 そして筒の根元についた突起を押すと、前方にバチリという音と共に電撃が放射された。


 その直撃を食らったサンドウォームたちは、あっさりと倒れてぴくぴくと痙攣して動けなくなり。


 念のためそれをドンドが斧で刈り取っていく。


 そうした戦法で、楽々戦闘をこなしていた。


「それにしても、何度見てもすごいだなぁ、その魔法道具の威力」


「それほどでもないですよ。本当に数秒ビリッとさせるだけなんで、私単独じゃ痺れさせて逃げるしかなかったので助かります」


 ドンドの賞賛に、ニルはえへへと照れつつ筒をホルスターに戻す。


「オラ、そういう魔法道具には詳しくねぇだが、どこにでも売ってるもんなんだべか?」


「なんでも、どこかの天才さんが大量に生産して売りさばいてるらしいんですよ。王国や冒険者ギルドが使う魔道通信みたいなのはすっごく高価ですけど、安いのはブラックマーケットにけっこうゴロゴロしてますよ」


「あー、そういえばガリッドが試験前に黒いマーケットがどうとか言ってたの思い出したべ。使えそうなのなくて結局買わなかったらしいだが」

 

「あはは。大して威力がないのとか、数回こっきりしか使えないのが大半ですからね、私のこの電気筒(スタンバトン)は、まあまあ使いやすい掘り出し物ですけど」


 そうして談笑しながらしばらく砂漠を歩き回った結果、


 ようやくふたりは螺旋階段を発見できていた。


「他の受験者の気配も、もうほとんどないべ。急がなきゃだな」


 そしてドンドは、勢いよく階段を駆けあがろうとしたが。


 ふと下を見ると、ニルがなぜかもじもじしながらその場に留まっている。


「ニルちゃん? どうしただ?」


「あ、その、えっと、ドンドお兄さんすみません。ちょっとだけ先に行ってて貰えますか」


「え? なんでだべ? 足でもくじいただか?」


「そうじゃなくて、えっと、その、お花摘みに行きたくて」


 その言葉を聞いてドンドは、この砂漠に花? という疑問が先に浮かんだが。


 以前ラミリネが同じ発言をした後、詳しく聞こうとして容赦ない平手打ちを食らったのを思い出した。


 その際にお花摘みの意味を学習していたドンドは、いっきに赤面して慌てふためく。


「あ、す、すまねえ! オ、オラ、先に次の階層の様子見てくるだよ!」


 ドンドは何度かつんのめりそうになりつつ、階段をドタバタと走っていく。


 そんな様子に、ニルはぺこぺこと頭を必死に下げさせていた。



 そして、ドンドの姿が見えなくなったあと。


 ニルは一転して無表情になると、


 首についた鉄の首輪を撫で、下部にある突起を押し込んだ。


「こちらニル。何の用だ、試験中に連絡するなと言っただろう」


 発せられた声は、驚くほどに冷淡な響きを醸し出していた。


『申し訳ありません。火急の事態が発生しまして』


 ()()()()()()()()()()首輪から響いてくるその声は、やや焦っている風で。


 ニルはかすかに眉を寄せつつ先を促す。


「まあいい。それでなんだ、火急の事態というのは」


『それが、ですね』


 そこから続けられた言葉の数々を聞くにつれ、徐々にニルの目が見開かれていく。


「間違いないのか、それは」


『はい。あの銀髪の娘は、おそらく”悪魔憑き”ではないかと』


「どういうことだ……まさか既に王国は……いや待て、銀髪だと?」


『は、はい。そんな髪の色をしていましたが』


「こいつは驚いたな。運命の巡りあわせというやつか」


『どうかされましたか?』


「いや、なんでもない。ひとまず尾行を続けろ。くれぐれも衛兵に捕縛されるようなヘマはするなよ」


『心得ております。ほかの奴隷どもはどうしますか?』


「捨て置け。どうせカモフラージュの為に続けていた奴隷商売だ。コブントあたりが対処するならよし、持ち逃げするなら責任を被せて幕引きだ」


『承知しました。それではご武運を、()()()()()()様』


 ニルは、首輪の突起の位置を戻し通信を終えると。


 わずかに笑みを浮かべながら、螺旋階段に足をかける。


「あのドンドとかいう男から、もう少し情報を聞き出さねばな。試験どころではなくなってきたが、これはこれで愉しみが増えて一興か」


 そんなことをつぶやき、ツインテールを弾ませながら一段跳びに階段を駆け上り。


 上り終えたときには、かよわい奴隷のニルとしての仮面を被りなおしておいた。



ちなみに13話で、心中を吐露しているラヴァンとは彼女のことです。

わざとぼやかして描写しましたが、気づいた方はいらっしゃるでしょうか……?

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