1.紡ぐ
いつからだったろうか、世界が変わってしまったのは。
いつからだったろうか、空が赤黒く染まってしまったのは。
いつからだったろうか、人間が生存競争の最下層に落ちたのは。
いつからだったろうか、バケモノ…喰魂屍が生まれたのは。
いつからだったろうか、世界が終わってしまったのは。
今はもう、確かめようもない。
まだ、赤い夜空に黄色の月が見える時間だ。轟音と喰魂屍の鳴き声が響いている。荒廃し、荒らし尽くされた街中に、月光のせいで人影ができていた。16〜18歳と言ったところだろうか、銀髪を揺らしながら少女が歩いていた。自分より少し大きな青年を肩に抱え、1歩、また一歩と踏みしめるように歩く。
「大丈夫っ…大丈夫だからねっ…」
意識があるかわからないが、青年を励ましながら運ぶその姿は、なんとも健気で儚く、無防備だ。
「大丈夫…大じょ…っきゃぁ!」
少女は血溜まりに足を取られ、前に大きく転けた。前にこけたことで、肩に抱えていた青年も前に飛んでしまう。
「あっ!…ごめんなさい!」
少女はまた立ちあがろうとするが、震える手足では、もはや自身の体重すら支えることはできなかった。
「…大、丈夫」
少女は必死に這いずった。青年のために。固い地面などものともせず、這いずって這いずって、青年の元へと辿り着く。
"もう、彼を抱えることはできない"
少女はそう悟ったのか、青年の横に倒れ込んだ。
「ごめんね…守れなくて…ごめんね…」
そう謝りながら、彼女は青年の頬に両手を添えた。
「ごめんね…ずっとずっと、愛してるから…
ありがとう、__リ__タ_…」
少女は、青年と唇を重ねた。そして、そのまま少女は青年の横で丸くなった。
それから彼女からぬくもりが消えたのは、
さほど時間がかかることではなかった。




