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09 二人で添い寝

今回はかなり短いです。

 リリアの願いを引き受けたクリフは一旦自分に当てられた部屋に入った。

 リリアの方でクリフの部屋に行くと言う形にまったようだ。

 出会っていきなり、少女に一緒に寝て欲しいというお願いをされるとは思わなかったが、彼女も職業による婚約破棄された上で暴行も受けている。

 きっと安心できる温もりが欲しいのだろうと、クリフは考えていた。


「クリフさん、入るよ……」


「ああ、入っておいで」


 扉をノックする音とリリアの声が聞こえたので、リリアを中に入れさせる。

 

(リリアの寝間着……、ネグリジェか……?)


 クリフはリリアの寝間着を見てドキドキしてしまう。

 彼女にはまだ公にしていないが、こう見えてもクリフは32歳の男だ。

 彼にとっては年下の少女に欲情しないようにしてはいたが、今のリリアの姿を見てはどうしようもなかった。


(彼女のネグリジェ……、透けてて下着が……)


 そうなのだ。

 リリアの着ているネグリジェは少しだが透けており、彼女の下着が見えている状況だったのだ。

 そのため、クリフはリリアから視線を逸らしたのだ。


「クリフさん?」


「あ、いや、その……、リリア、それ……透けて……」


「構わない。 クリフさんになら……」


 視線を逸らしながらしどろもどろに言うクリフをよそにリリアはクリフの傍まで近づいてくる。

 とても32歳の男とは思えない程に動揺しているクリフにリリアは抱きついてくる。


「ん……」


「いいのかリリア? 君は確か婚約破棄の際に……」


「うん。 クリフさんに甘えたい」


「実際には32歳の男にか?」


「クリフさん、32歳なんだ。 私は17歳になったばかりだから……15歳差?」


「そうなるな」


「なら、尚更。 いっぱい甘えたい」


 ようやくリリアに実際の年齢を口にしたクリフ。

 しかし、リリアは今から一年前の婚約破棄事件の傷を癒したいのか、歳の離れたクリフに甘えたいのだ。

 添い寝を頼んだのも、それが理由だろう。


「それならしょうがないか。 じゃあ、早速寝るか?」


「うん」


 クリフがそう言うと、リリアは笑顔で頷いてベッドに入る。

 二人分なら大丈夫な大きさのベッドなので、窮屈な思いはしないだろう。


「クリフさん……あたたかい……」


 ベッドで一緒に寝るクリフとリリア。

 そのリリアは、クリフに抱きついたままだ。


(あれだけ酷い目にあった反動か……。 ジョセフ卿が俺に頼むわけだ)


 そんなリリアの頭を優しく撫でながら、クリフは心の中で呟く。

 彼女が錬金術師である事を理由に無能扱いされ、婚約破棄をされただけでなく暴行を受けた。

 性的な暴行までは受けなかったが、それでも彼女の心に傷を付けるには十分すぎた。


(俺が……彼女を、リリアを支えて、守ってやらないとな)


 クリフの温もりに安心したのかすやすやと眠るリリアを見て、クリフは改めて決意をした。

 自分がリリアを守り、支えると。


「お休み、リリア」


 頭を撫でながらクリフも眠りについた。

 この日のリリアは、クリフの温もりによって悪夢を見る事はなかったようだ。



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