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06 クリフの治療

「リリア姉様、お医者さんが来られましたよ」


「うん、ありがと……。 ここに、連れて……くれる?」


「はい」


 クリフをベッドに寝かせてポーションを塗り薬にして応急処置を続けていたリリアの元にメルアが来た。

 医者が来た事を教えてくれたようだ。

 リリアは、メルアにここに連れてきてと伝え、メルアがすぐに行動を起こす。


「お待たせしました。 患者は彼なのですね」


「はい……。 採取先の洞穴の中で……傷だらけで倒れてて……」


「私の魔法と姉様のポーションで応急処置を行いました」


「なるほど。 なかなかの処置のすばらしさですな。 後は私達にお任せください」


「お願いします」


 状況などを説明を聞いた医者は、すぐにクリフを診察する。

 身体を触診しながら、助手にメモを取らせている。

 その後で、塗り薬を用意して患部に塗っていく。


「あの塗り薬とかは……、【薬師】という職業の者しか……作れない」


「そうなのですか?」


「錬金術師が……作れるのは、あくまでも応急的な物や攻撃用の道具、そして日用品。 あの塗り薬は……【薬師】でないと……だめ。 薬は素人が作れば……毒になる」


「副作用という名の……ですか」


「そう。 だからお医者さんは助手に【薬師】の人を……連れてきてる」


 医者が塗り薬を塗っている様子を見てリリアはそう言った。

 錬金術師が作れるものは、あくまでも応急的な飲み薬と攻撃用の道具と日用品のみ。

 先ほどの塗り薬は、【薬師】の人間でないと碌に調合が出来ず、素人がすればそれは毒になって人体に害をなす。

 メルアも【薬師】と【錬金術師】の違いに驚きつつも、納得の様子を見せていた。


「終わりました。 幸い応急処置が良かったので、しばらくすれば立てるようにはなります。 火傷の部分が多かったですが、骨折はしていませんので」


「そう……ですか。 よかったです」


「わざわざありがとうございます」


「お大事にするように伝えてください。 それでは私はここで失礼します」


 クリフは幸いにも火傷だけで済んだらしく、応急処置が良かった事もあってかすぐに立てると医者から言われた。

 リリアもそれを聞いて安心したのか、胸を撫でおろした。


「それでメルア……。 クリフさんの今後は……どうなるの?」


 医者が去った後で、リリアはメルアにクリフの今後の事を聞いて来た。

 勇者パーティーから追放されたという事で、彼に居場所があるのかどうかが気がかりなのだろう。


「父様は、クリフさんの意思を優先にはするつもりですが、基本的にリリア姉様の傍に居させるつもりでいるそうです」


「私の……? いや、そうか……。 未だにアレの……刺客がいる……から」


「はい。 私もフレア姉様も護衛出来ない時があるので、素材採取の時とかにクリフさんをと……」


「勇者パーティーに戻る可能性は……?」


「ないと言ってました。 ルール上、勇者パーティから離脱してしまった者は状況問わずに再度戻る事はできない仕組みのようで」


「そう……」


 メルアはクリフの今後についてそう答えた。

 彼の意思を優先にするが、可能ならばリリアの護衛として傍に居て欲しいそうだ。

 ただ、勇者パーティーを離脱したために、状況問わずそこに戻る事は事実上不可能となったので、彼の選択肢はないに等しいだろう。


「となると……、王家の鎧は……返さないと……」


「そこの件も父様に相談ですね」


 今は部屋の隅に置かれている【タンカー】が勇者パーティーに入った証ともなる王家の鎧は返却しないといけなくなる。

 だが、今の鎧は所々にヒビが入っている。

 なので、メルアはそれについても父親のジョセフに相談するそうだ。


「ん……」


「あ、起きたようですね」


「リリア……? それに君は……確か」


「はい、メルアと申します。 この町の領主の娘の一人で【聖女】をやってます」


「そうか……。 身体が軽いが……リリア、君が?」


「私はあくまでも……応急処置をしただけ。 後はお医者さんに診てもらった」


「なるほど……」


 目覚めたクリフは、さっきの会話でリリアが自分を看病して貰ったと理解した。

 最終的な治療は医者によるものだが、それまでは彼女が看ていたのだから。


「それじゃあ、私は新たな相談をしに父様の元に行きます。 報告の後も聞いてきますので。 その間は二人でごゆっくり」


「あ……」


 メルアはリリアの制止を振り切り、二人きりにさせるようにして部屋を出た。

 ただ、王家の鎧の扱いについての相談と報告の後の進捗も聞くそうなので建前ではなさそうだが。


(く、クリフさんと……二人きり……)


 リリアはクリフと二人きりの空間になった部屋で、どうしようか内心で焦っていた。

 彼を見た瞬間から湧き上がる感情が、恋心などとは知らずに。


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