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第一話、冒険者ギルドで、テンプレ! その1

「はじめまして、ですね。冒険者ギルドへようこそ! 今日はどういったご用件でしょうか?」

 酒場みたいな建物に入ると、受付けのようなカウンターがあり、お約束の美少女な受付嬢が出迎えてくれた。

 まだ十代中ごろだろうか、だいぶ若い。明るい笑顔が、DTの俺には眩しすぎる。

「え、えっと。あの、冒険者、ギルドの登録を……」

 なんとか言葉を絞り出す。

 やべえ、俺、コミュ症かよっ!?

 美少女を前に、まともに話すことすらできねーとかっ。

 しかし、美少女の方は俺の様なヤツは見慣れた物なのだろう。苦笑するように小さく微笑んで。

「ギルドへのご登録ですね。では冒険者免許のご提示をお願いします」

 ……よくわからないことを言った。

 冒険者免許?? ナニソレ?

 たぶん雰囲気的に、冒険者カードっぽいものだと思うんだが。

 冒険者の登録ってギルドでするもんだろ?

 それなのに免許とかって、どういうことだ?

 俺が首を傾げていると。

「あら……お持ちでない? ああ、拠点変更の手続きではなく新規のご登録なのですね? きちんとした装備をされているものですから早とちりをしてしまいました。すみません。こほん。では、しかるべき教育機関の卒業証書、またはしかるべき訓練機関の終了証書をご提示いただけますか? この場で冒険者免許を発行いたしますので」

 ナニソレ。意味不明なんですけど。

 冒険者になるのに、なんか訓練所とか入らなきゃいけないの?

 ああ、そういや某3DRPGだとキャラ作成がくんれんじょうだったっけな。

「はぁ、……これもお持ちでない? ……では、ハンター免許やレンジャー資格など、冒険者資格に読み替え可能な資格を証明するものはお持ちでしょうか?」

 俺は、首を横に振ることしかできない。

 ナニその資格社会的要求。

 冒険者って、そういうのじゃないんじゃね? なんか思ってたのとだいぶ違う。

 茫然とする俺を尻目に、受付嬢は小さくため息を吐いた。

 なんだか最初の明るく優しそうな印象からどんどん扱いが悪くなってる気がする。

「これも当然、なし、と。……じゃあ、騎竜免許、精霊使役といった特殊な技能や資格はおありでしょうか? 最悪、第二種飛行箒免許程度でも、荷役扱いで仮登録することは可能ですが……やっぱりなし、と。……ふざけてるんですか、あなた!?」

「いや、そんなこと言われても」

 冒険者ギルドなんて、だいたいのWEB小説なんかだと名前書く程度で登録できるもんだろう? そんな資格とか免許とか、そんなのあったら冒険者なんかやってないんじゃね?

「え? 冒険者ギルドなんて名前と出身地書くだけで登録できるもんだろう、ってあなたそれどこの世界のギルドですかっ!? ふざけたことを言わないでください、冒険者は国家公務員ですよ? たかが名前を書いたくらいで、武器の携帯および所持を許可されるわけがないでしょうがっ!?」

 そういうもんなの?

 ってゆーか、剣と魔法のファンタジー世界じゃなかったのかよここって。

 武器の携帯とか所持にまで制限ありとか、ちょっとまてやこらって感じなんだが……。

「……ところであなた、腰に立派なものをぶら下げていますが、刀剣使用免許または刀剣所持許可証はお持ちなのですか? あ。……警備兵っ! 早く! このひと銃刀法違反です! 捕まえてくださいっ!」

 俺は、逃げ出そうとした!

 しかし、回り込まれてしまったっ!?




「……ったく、どこのド田舎から来たんだよお前さんは」

 強面のおっちゃんが、椅子に縛られた俺を睨み付けてくる。

「ここは、お前さんが居たようなド田舎じゃねーんだ。都会にゃ法律ってもんがあってな、従わないと罰せられるのがあたりまえってぇわけだ」

 武器は取り上げられ、身動きもとれない状態。

 バンジー急須。

 いや、万事休すってやつだ。

「だいたいお前、そんな恰好なら門のとこで都市への武器持ち込み許可の提示を求められるだろうが。旅の途中ならともかく、街中で帯剣できるのは許可を得た者だけだぞ? ……まさか密入国じゃねーだろな?」

 あー、俺、門通ってねーし、知らねーよそんなの。

 ってか、異世界転生ってこんなのだっけ?

 俺ろくでもねぇ目にしか会ってない気がすんだけど……。

 なんかもう、帰りたくなってきたな。でも、現実世界に戻るには……死ぬしかねーんだよなぁ。

 飽きたら帰れるってお手軽~とか思ってたけど。夢みたいなもんだって、わかってても。自分で死ぬのって割と覚悟必要じゃね?

 あー、もう。あのバカ猫やろう……今度会ったら覚えてやがれ。

「……おい、聞いてんのかおいこら」

 俺がぼんやり人生について考えている間にも強面のおっさんがなんか言ってたらしいが、全然聞いてなかった。

「ったく、反省の色がねーな、こいつぁ」

 頭をガシガシかきながらおっさんが悪態をついたその瞬間。

 ジリリリリン、ジリリリリン、とベルの音が鳴り響いた。

 目覚まし時計みたいな、音が。

「なんだ?」

 おっさんもベルの音に心当たりがなかったらしく。キョロキョロと周りを見回して。

 いつの間にかテーブルの上に置かれていた、黒い電話に気が付いた。

 電話、なんだろう。昭和の時代の映画とかでしかみたことがないような、黒塗りのダイヤル式のアナログ電話。実物を見るのは俺も初めてだった。

 ってか、ここって電話とかあるような世界なのか? お約束のなんちゃって中世ファンタジーじゃなくって?

 そういやよくよく思い出して見たら、クソ猫も、剣と魔法のファンタジー”っぽい”異世界って言ってたな。「ッポイ」は余計だろっ!

 見ているうちに、おっさんがなんか顔をしかめながら黒電話の受話器を取った。

 慣れた様子で耳に当てる。

『どーも! 神様でっす。冒険者ギルドのギルマスさんですかー?』

 馬鹿でっかい声が受話器から漏れ聞こえてきて。

 見る間に、おっさんの顔が不機嫌そうに歪んでいった。

「……神が何の用だ」

『えっとねー。今、冒険者登録しようとしてた子って、異世界からあたしが連れてきたわけよ。そこんとこ、ちょーっとばかり考慮してくれないかなぁ、んふふ』

「くそっ、妙に常識がねぇと思ってたら、異邦人かよこいつ」

 おっさんがぎろりと俺を睨んできたので、さーせん、とばかりにちょっとだけ頭を下げる。

『でさー。変にその子を特別扱いはしなくっていいけど、ちょーっとばかしいろいろなことは不問にしちゃってほしいかなーって、神様としては希望するわけよ?』

「……冒険者登録してやるだけでいいのか?」

『そだよー。流石に冒険者にもなれずに犯罪者落ちとかあんまりだしねっ。お話としてつまんないし?』

「つまるとか、つまらねぇとか。世界はてめぇの遊び場じゃねーんだぞ?」

『あははっ。つまるとかつまらないとか、トイレの話みたいだね! んじゃよろぴく~』

「……」

 おっさんは無言で受話器を叩きつけると、リン、と鳴って、黒電話はそのままどこかに消えてしまった。

 ちゅーか、神様相手だってのに、よくあんな啖呵きれるよな、おっさん。

「あー、クソッ」

 ガシガシと頭を掻きむしりながらおっさんが俺を睨み付けた。

「お前に言ってもしょうがねーけどな。あんなのがこの世界の神とか終わってるだろ?」

「あー。俺、よくわかんないんすけど。神様から電話とかもしかしてよくあるんすか?」

「神託とか言われてるけどな。暇つぶしとかで割とよくかかって来んだよ。オレもこれで何度めか、正直覚えてねぇくらいだ。でもって大概、ろくでもねぇことにしかならん」

 深くため息を吐いて、おっさんがまた頭を掻きむしった。

「お前も何言われてこんなことに来たのか知らねェが、あんなの言われるままに従ってろくなことにはならねーぞ? つきあうこたぁねぇ、帰れるもんなら今すぐ帰りやがれ」

「いちおう、俺が希望してここに来てるんすよね」

「異邦人ってのはそういうやつ多いらしいな」

 はぁ、とさらに深くため息を吐いて。

 おっさんがあごをくいっと、ドアの方に向けた。

「しかたねぇから、冒険者登録はしてやる。まずはてめぇの実力を見てやろう」

「お。ギルマスさん自らとかっ。俺、結構、やれると思いますよ」

 剣と魔法の才能もらって来たからな! 1000年に一人の逸材だぜっ。




 ギルマスのおっさんに案内されて、裏手の訓練場らしきところに案内された。

 おっさんは木刀を持つと。

「おう、お前さんは腰に下げてるその剣でいいから、適当にかかってきな」

「あれあれ、大丈夫ですか? 俺、結構すごいですよ?」

 ここは、あれだ。思わずやり過ぎちゃって、「俺、なんかやっちゃいました?」って言う場面だよなっ!

「……じゃあ、いきますよ」

「おう、かかってきな」

 腰の剣をっすらりと抜こうとして。

 ……引っかかってうまく抜けなかった。

 ちゅーか、結構重いよな。

 腰に下げてる時はそこまで思わなかったけど、片手で持って構えると重い。手がなんかプルプルする。しょうがないので、両手で持って上段に構えた。

「や、やー!」

「……話にならん」

 木刀すら使わず、足元を蹴られて地面に転がる羽目になった。

 あ、あれ?

 俺、1000年に1人レベルの剣の才能をもらったはずなんだけど。

 全然身体動かないし。うまく剣も振れないんだがっ。ちょ、チートどうした!?

「こんどはこっちから行くぞ。」

「く、お願いします」

 慌てて起き上がって構える。

 と思った瞬間、地面に転がっていた。

 いや、キラってなんか光ったのは見えたんだけど、受けるどころか身体全然動かねーし。

「ほう。目は悪くないな。今のが見えたか。10年ほど鍛えればそこそこやれるようにはなるんじゃねぇか?」

「お、俺、神様に剣の才能もらったはずなんですけど」

「アホかお前、才能なんか磨かなきゃ宝の持ち腐れだろうよ。そもそも身体がまったく出来てねぇ。一流どころってのは、才能が有るのは大前提。それを鍛えに鍛えまくって鎬を削って、さらにその先に進んだヤツのことだぞ」

「神様のアホー! 話違うじゃねーかーっ!?」

「お前はまず身体を作るとこからだな。さて、技を喰らうのもいい経験になるだろ、手加減してやるから一発喰らっとけ」

「それ、もしかして、神様に対する八つ当たりなんじゃ?」

「はっはは! 運が悪かったな坊主。【破断】」

「ぐはぁーーーっ!?」




 ……あれ?

 気が付くと真っ白な部屋で。

 あれ? もしかして、俺、死んだ?

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