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三十ニ話 03 真なる迷宮



 俺は早速アグニスに言われた住所の場所に来ていた。


 そこはごく普通の家……とは言い難く。

 様々な工具にテレビの試作品、組み立て中の自動車、裏庭には巨大な溶鉱炉まで立っている、一体どうやって作ったんだ。


 そして俺の目の前には12歳くらいの見た目の女の子が待ち構えていた。

 桃色の髪にブカブカの厚い白い服を着ている。


「…………お前がアグニスと同じ異星人か?」

「そうだけど、君が? あっ、俺はテルト・リバース」

「私はリーレレだ……カード、いじりまくってるな」


 その表情はププローと同じで無表情だ。

 初めて出会った頃のプリシナより無表情かも。


「いや軽くカスタマイズしただけだけどね」

「…………じゃあメール機能の取り付け作業を始める」

「頼むよ……」


 話はアグニスが通してたらしくスムーズに進んだ。


「《電子の妖精(エレクトロ・ファータ)》!」


カチャ カチャ……


 リーレレが何かのスキルを使って数秒間ほど何もない空間を小さな指で叩いた。


「……終わったぞ」

「早い! あっ、ありがとう」


 もっと時間が掛かるものだと思っていたのにあっさりと終わった。


 リーレレは可愛く左右に体を揺らした。

 喜んでるのかな?


 メールの使い方も聞こうかと思ったけど聞くまでも直感的に分かった。

 後はアドレスを登録してっと……終わりだ。


 テストでアグニスに一言挨拶を送ると30秒程でメールが帰ってきた。


 『可愛いだろ?』ってどういう意味だ?

 ああ……リーレレの事か。


「あのさリーレレ、良かったら少しお話しない? オルテュス人ってどんな姿なの?」


 このまま帰るのも味気ないし軽く雑談を振ってみる。


「いいぞ。《想造の粘視イマジナリー・リームス》」

「へぇ」


 リーレレは目の前に幻影を作ってオルテュス人の姿を見せてくれた。


 多分鳥かな? もしかしたら恐竜とかかもしれないけど。

 2足歩行で羽は退化して4本の指があった。


「これが私達の姿だ。お前はどんな姿をしているのだ? 確か地球人だったな」

「いや俺はこの姿のまんまだよ。丁度この星の人間と同じ姿だったらしくて」

「それは……ズルいな」


 俺も《想造の粘視イマジナリー・リームス》を持っていたけど、見せるまでもなく俺の姿はほぼ同じだ。


「そんなに動き難い?」

「最初は歩くのもやっとだったぞ。それに気嚢(きのう)が無いからな呼吸が大変だ」


 リーレレもやっぱり動き辛そうにしていた。

 ププローやホバッツがバックアップに回ったのはそれも理由の1つかもね。


気嚢(きのう)?」

「効率よく酸素を取り込む肺の仕組みだ」

「へぇ…………」


 気嚢(きのう)ってのがなんなのかは知らない。

 オルテュス人が持つ特別な呼吸器官かな?


「ありがとう。色々話を聞けて楽しかった」

「うん。また何かあったら来い」


 リーレレの話はちょっと難しい事もあったけど面白くて、ついつい良い時間になるまで居座ってしまった。

 暇があったらまた立ち寄って見よう。




◇◇◇




 再び翌日。


 今日は《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》と《流星の羽ばたき(りゅうせいのはばたき)》と《晴天の御旗(せいてんのみはた)》の全員が集まった。


「なるほど。彼等《流星の羽ばたき(りゅうせいのはばたき)》と《晴天の御旗(せいてんのみはた)》の皆さんが我々の後方支援をしてくださると」

「お任せ下さい! 《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》の皆さんを全力で支援します!」

「かの有名なロイナード様の支援を出来るなんて光栄です!」

「分かりました、おまかせします」


 晴天の御旗(せいてんのみはた)》と《晴天の御旗(せいてんのみはた)》もリーダー以外の全員がこの世界の人間だ。


 ロイナードの名声は各地に広まっているらしく尊敬の眼差しを向けられていた。


「変わった方々ですね」

「そうだね」


 確かにパーティが個性的な面々だ。

 やたら大きな帽子をかぶった魔法使い、楽器を抱えてた演奏家風の男、80歳くらいのお婆さんまで幅広い。

 ププローもホバッツも異星人だからあまり見た目や年齢に頓着せずに仲間を集めたんだろう。


「それで中はどうだったの?」

「予想以上の変化でしたね。まずこれまでの階層も少し長くなり敵もワンランク上がってる印象です」

「へぇ? そんなに変わるもんか」

「そして第8階層の向こうには確かに第9階層が生まれていました。そこから先へは行っていませんが」


 先遣隊として先に入ったロイナードに《陽炎の迷宮(ダンジョン)》の内部を尋ねた。

 やっぱり敵も手強くなっているらしい、楽しみだ。


「《陽炎の迷宮(ダンジョン)》に潜って戻るのも1日かかるな。補給路を確保して物資を運び込まないと駄目だろう」

「それは私達にお任せ下さい。既に食料やキャンプの準備は終えています」


 オメロスの提案にホバッツが答える。


 ただでさえ長い《陽炎の迷宮(ダンジョン)》がさらに長くなったらしく、大量の水や食料などが必要になりそうだ。


「それで私達はどうします?」

「さっき話したように水と食料とキャンプは彼らがやってくれるから必要ない」

「となると私達は手ぶらで良いんですか?」

「そう。《陽炎の迷宮(ダンジョン)》は距離も伸びてるらしいから、無駄な物を持って体力を消耗しないようにって」

「やったー!」


 シャロンが一番大喜びだ。

 普段はシャロンまで無理して重い物を背負わされてたからな。


「さて次は俺たちの番だ!」

「行きましょう!」

「うんっ!」

「おうよっ!」

「まかせなさい!」


 俺の掛け声にみんなの張り切った返事をしてくれた。

 さあ、いざ進化した真の《陽炎の迷宮(ダンジョン)》へ────

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