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一話 02 キャラメイク

 俺は意識を取り戻すとすぐにさっきの事を思い出してた。


 そうだ俺はあのカードで『転生(てんせい)』するを選択したんだった。

 今どうなってるんだ?


 ……なっ!? 体が動かない!


 全身に違和感だらけだ。

 感覚はあるのに手も足も口も動かせない。


「ここは?」


 そう思っただけなのに声になって響く。


 あたりは真っ暗で上から光が差し込んでいる。

 首が動かないから光源は見えない。

 まるで星のない宇宙空間だ。


裏瑪(うらめ)照斗(てると)様、只今よりキャラメイクを開始(かいし)します」


 どこからか落ち着いた女性の声が聞こえた。


「キャラメイク?」

「これから向かう世界での容姿を決定します」

「…………本当に転生できるの?」

「はい」


 半信半疑だったけど本当なのか。


「幸い転生先の住は地球人に酷似しています。自由に望む容姿をイメージして下さい」


 目の前に全裸の俺の肉体が浮かび上がる。


 キャラメイクか。

 まるでこれから本当にゲームの世界に行くみたいだな。


「そうだなイメージか。んー……どうせならイケメンの方が良いし、とりあえずで菅○将暉」


 目の前の俺の体がみるみる大きくなって一部を除いて菅○将暉になる。

 あっ、イメージでできない所は変わらないのね。泣きたい。


「三○春馬、阿○寛、小○旬、藤○竜也…………」


 俺の体が次々と思い描いた俳優や芸能人の姿に変わる。


「何か違うなぁ……俺がカッコ良いって思うのってゲームや漫画のキャラだし」


 試しにリアル寄りのゲームのキャラを幾つかイメージしてみた。


「……やっぱ違和感すごいな」

「そのような姿は転生先でも不自然過ぎます。許可できません」

「だよなぁ、結構難しいなこれ」


 いくらリアル寄りでも所詮は作りものだな。


「望むなら女性の姿も選択出来ます。試されますか?」

「女性の姿か……いや無い無い。俺はゲームで主人公に感情移入するタイプだ。女性の姿はありえない。」


 俺が考えてる事が全て言葉になって響いてしまう。


「そうだよ、自分の投影先がいきなり別人って違和感がある。親から貰った自分の顔もそこまで嫌いじゃないしそんなに悪くない筈だ。元の俺の姿に戻してくれ」


 目の前の肉体が最初の俺のいつも鏡で見慣れた姿に戻った。


「この姿で決定しますか?」

「いや待った!」


 あっ、やっぱ駄目だ!

 さっきのイケメン俳優や芸能人と比べると流石に落差で見劣りする!

 父さん母さんごめん! 


「顔とか体を左右対称というか、矯正みたいにバランス整えるられる?」

「了解しました」


 俺の体や顔の歪みが整えられていく。


「おおっ、思った以上に良いね! 人間は左右対称なら美しいと感じるって聞いた事があったけど本当だね」

「この姿で決定しますか?」

「いや待った!」


 パッと見はこれでも良いんだけど……。


「あとホクロとかシミとかも取って。ついでにムダ毛の永久脱毛も!」


 俺の体からホクロやシミやニキビ跡が消えていく。

 調子に乗って永久脱毛もしちゃった。


「うん、良いね良いね。これくらいのプチ整形なら許されるでしょ!」

「この姿で決定しますか?」

「いや待った!」

「……」


 女の人の呆れるような沈黙が聞こえた気がする。


 まあ肉体はこれで完璧かなと思うんだけど。


「お姉さんって誰? もしかして神様とか?」

「お答え出来ません」


 やっぱ答えてくれないよね。


「向こうの世界ってどんな感じなの?」

「それもお答え出来ません」

「そっか」


 現地で学べって事かな。

 それも良いか。


 さて、何かやり忘れた事他に試したい事とか無いよな?


 ……無いな。

 早く異世界って所に行って見たいし。


「うん。じゃあこれで決定で!」

「了解しました」


ブォオオンー……


 その音と共に俺の意識は再び途切れる────




◇◇◇




 暗い空間の中にテルトの新たな肉体と複雑な機械が浮かんでいた。

 ひと目でその機械が地球の科学技術を遥かに超えているであろう事が伺える。


 テルトの肉体は機械に背を向けるように回転し停止した。


「神経ネットワークの転写(てんしゃ)を開始します」


 女性の声の後に機械の中の透明部分に光の点が浮かび上がる。

 点と点が線で繋がり、脳の細胞、脊椎、全身の神経を形作る。

 その光がテルトの新たな肉体に近付いてそして重なる。


「神経ネットワークの転写(てんしゃ)が終了しました」


 女性の言葉から分かる通りこれは『転生(てんせい)』ではない『転写(てんしゃ)』なのだ。


 もっともその2つは言葉こそ違えど、対象が認識する現象は同じである。




◇◇◇




 ────再び俺の意識が戻った。


 今度はさっきと違って手足の感覚がある。

 辺りは真っ暗でしかも無重力だ。


 上から降り注ぐ光が輝きを増すのを感じて見上げる。


「眩しい!」


 今度こそ自分の口から言葉が出る。

 目を細めて見上げると光の球体が俺の方に迫って来る。

 本能的に逃げようとしたけど足場も無くてどうしようもない。


「幸運を祈ります────」


 さっきの女性の声が最後に響く。

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