夕方の4時頃
ほのぼのホラーです
よろしくお願いいたします
じゃーんけーんぽーん
夕方の四時。
とある工場の敷地内で小学生女児達の元気な掛け声が響いた。
「姫華ちゃん、鬼ねー!」
「いーちにーぃさーん…」
キャーキャーと楽しそうな声を出しながら、少女達は散り散りに走っていく。
その中で一際目立つ少女。
天然の茶色い髪を二つにくくり、ブランドの子供服に身を包んでいる。
この工場の会社を経営している社長の娘で、西ヶ崎キララという名前だ。
彼女の友達の優美はこの工場の工場長の娘であり、キララにとっては父親の部下の娘という立場にある。
優美は敷地内に入ってはいけないと分かっていながらも、甘やかされて育ったキララを止めることが出来なかった。
「ねぇ、キララちゃん…あんまりそっちに行かないでね」
優美がおずおずと話しかけると、キララは舌打ちしながら分かったと答えた。
「ちょっと、優美! アンタと一緒だとすぐ見つかるんだから、向こう行きなよ!」
キララは気の強い子供だった。
イジメなんてことは絶対にしないけれど、なんとなく周りが自分の言うことを聞いてくれると分かっていた。それがたしかに気持ちよかった。
優美と別れてから、本当は近づいてはいけないと言われている建物の影に隠れる。
耳をすませるとゴウンゴウンと荒々しく機械が動く音が聞こえる。
建物の傍には細い川が流れていて、そこの柵と建物の間に身を隠した。
ここならば見つかる可能性は低い。
「ふふっ」
優美の困った顔を思いうかべて笑う。
姫華もきっと、キララを見つけられなくて困ることだろう。
きっと他の子達もキララを探し回るに違いない。
建物のかげに隠れながら一人ほくそ笑む。
「ねぇ」
ふと、女性の綺麗な声が聞こえた。
しかしキララが辺りを見回しても誰もいない。
「ねぇってば」
もう一度声がした。
今度ははっきりと、足元のほうから聞こえた。
恐る恐るキララが地面に目を向けると、そこには土にまみれた骨の手が生えていた。
「ひっ…!」
キララは思わず小さく悲鳴をあげて尻もちをついた。
骨が話しかけてきたように思える。
そんなはずはない。
そもそもこの骨だってオモチャの可能性だってある。
キララはゴクリと喉をならして、骨に近づいた。
ありがとうございました。