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決意

「どういうつもりだ……ルーク」


 俺はサイが少女の頭の目掛けて振り下ろされた剣を俺は右腕で受け止める。


「貴様……。その腕はいったい?」


 アラン・ジラルドが俺を見て驚きの声を上げる。

 それは当然だろうな。

 本来なら斬り下ろされている腕の筈なのに斬り下ろされずに受け止めている。血を一滴も垂らさずに。

 だが俺の腕は無事でも斬られた箇所の服は自然と破けた形になる。その腕から見えた物は……。


「黒鉄……」


 そう。

 俺の腕は黒い鉄で覆われていた。

 だから剣で俺の腕を斬り落とす事が出来ない。


「……どうして?」


 後ろで金髪の少女……フレイが驚きと戸惑いがない混ぜになった声を上げる。

 その驚きと戸惑いは3つの理由から来るものだろう。

 1つは俺の剣で斬りつけられた腕が斬り落とされず、しかも服の下にあったのは人肌ではなく黒鉄に覆われていた事。

 2つ目は仲間がフレイと呼ばれた少女に振るった剣を俺が受け止めた事。

 そして最後の3つ目……。その相手が10年前に出会った少年だという事。

 恐らく先に述べた2つの理由より最後に述べた理由に1番驚いている事だろう。俺だってそうだ。最初に顔を見た時10年前の少女がそのまま大きくなった感じで全く変わってなかったから、会ってすぐに理解した。目の前にいるのは俺の初恋のフレイ・ザズであると。

 10年ぶりに再開した彼女は前と変わらない背中まで届く綺麗な金髪。そして昔より大人びた目顔鼻立ち。彼女の表情からは昔のような愛らしさなどではなく、凛々しさを感じさせた。

 今目の前にいるサイが剣をフレイに振り下ろそうとした瞬間、俺は迷わずに走り出した。無意識だった。でも自分が何故こうしたのかは分かる。


『約束……。俺は君を守るよ。たとえ、国を裏切る事になっても』


 俺がフレイと交わした10年前の約束。

 サイに斬り掛かられてるのを見た時、俺の脳裏でその時の言葉が、光景が流れる。10年間……1度も忘れられなかったあの光景を。

 俺は心の中である1つの決意を固める。


わりいサイ、ここまでだ」


 笑顔で言う俺を訝しむような目を向けるサイ。


「どういう事だよルーク……ウッ」


 俺はサイに肉薄し鳩尾に強烈なブローを一発打ち込む。

 普通ならそこで意識を失うが、サイはまだ意識を保っていた。

 

「ルーク、お前は……」 

 

 俺はすぐさまサイの顔面に右ストレートを叩き込む。

 サイはその衝撃で後方へブっ飛ぶ。

 そして仰向けに地面に倒れ伏すと、ピクリとも動かない。どうやら気を失ったみたいだ。


「ルーク・ヴァンス。貴様……どういうつもりだ? 我がザズ帝国に寝返ろうとでも言うのか?」


「そのつもりだと言ったら……迎えてくれるのか?」


 俺が問い掛けるとアラン・ジラルドは暫し俺の目を見て考えるような素振りをする。そして頷くと……。


「良いだろう。お前の強さ……。そして何よりその何者をも寄り付かせようとしないその目と態度が気に入ったっ!! ザズ帝国に迎えた暁にはお前に一個師団の隊長の座を与える事を約束しよう」


 そう言って不敵な笑みを浮かべながら手を差し出してくる。

 俺は静かにアハン・ジラルドの元へと歩み寄る。

 そして彼の差し出された手に自身の手を伸ばす……と


「グッ……貴様……どういうつもりだっ」


 俺は差し出された手を握ると見せかけてサイと同じく鳩尾目掛けて拳を叩き込む。サイの時と違って今度は深く入り込んだのか、アランの顔から汗が吹き出て顔色は真っ青になっている。


「どういうつもりかって? こういうつもりだよっ!!」


 俺は一旦後ろに少し下がってからアランの顔目掛けてハイキックを打ち込む。ハイキックは綺麗にアランの顔に決まると、奴は足から崩れ落ち前屈みに倒れる。


「…………」


 俺はアランが倒れたのを見届けると、こちらを静かに睨みつけるように眺めている少女……フレイ・ザズを無言で見やった――。

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